「21世紀型マーケティング」(#004)SWOT分析は使えない
『日刊「WEBのツボ」 ~次世代WEBマーケティングを読む~』に掲載
http://www.soho-union.com/
【○】本日のお題 「21世紀型マーケティング」(#004) ━━
咲本@時計台ネット
▽ SWOT分析は使えない
前回は、マーケティングの基本と言われている4Pという考え方に、私なりのダメ出しをさせていただいたつもりです。ダメなものを考え方の基本にしたら、出る結論もダメなものとなるに決まっています。今回のお題にあげました「SWOT分析」というものも、マーケティング屋さんを含むコンサルティング業の方々が、まるで常識のように使う代表的手法のひとつです。名称くらいは聞かれたことのある方も、いらっしゃるのではないでしょうか?ところがこの手法、実は、巨大企業における戦略分析以外には、「使えない」代物なのです。
では、SWOT分析を簡単にご説明いたしましょう。
まず、企業戦略を内部的能力と外的可能性に分けます。
前者、企業の内部的能力として、
S=Strengths(強み)
W=Weaknesses(弱み)
後者、企業の外的可能性として、
O=Opportunity(機会)
T=Threats(脅威)
と、4つの要素に分け、それらを調和させ、適合させる分析手法です。
分析するからには、あらゆる情報を数値化し、膨大なデータをコンピュータで解析した結果から戦略立案をするわけです。
身近にコンサル屋さんがいらっしゃる場合、その方から「御社の強み・弱みはどこにありますか?」という発言を耳にされたことありませんか?これは、SWOT分析の考え方に影響されたコンサルの質問かと思います。
ここまでの説明だけでは、「至極尤もな手法であり、使えそうやん!」とお感じの方も多いかと思います。
しかし、「巨大企業以外」の企業の現場にこれを持ち込みますと、様々な問題点が浮上してきます。
【問題点】
1.企業の内部的「強み」と思われる点が、本当に強みと言い切れない場合がある。
「強み」という考えは、抽象的かつ相対的なものです。「ここは強い!」と 考えても本当に強いのかどうか怪しいものです。 また、「強み」と考えることによって、自爆することがあり得ないでしょうか? 例えば、分析結果の強みが、「商品の安さ」という場合はどうでしょうか? 他社が自社より価格を安くすれば、もうそれで自社の強みがなくなってしまいます。 それはマズいと、更なる安売りを続けていけば、いずれはそれが致命傷となりかねませんよね。
2.「強み」と分析された点が、強みでない場合が多い。
1.で申し上げた例ですと、「商品の安さ」ということは、実は強みではなかったと考える方が自然です。 SWOT分析の延長線上に「コア・コンピタンス」という有名な概念がありますが、これなども、コア・コンピタンスなど企業内部に存在しないだろう企業がほとんどのはずであり、それにも関わらず、気軽にこの言葉を使うコサル屋さんが多いことには辟易いたします。
3.「強み」がなく、「弱み」があまりにも多すぎる場合が多い。
あまりにも多すぎる弱みを、「全て何とかしなさい!」と言われましても、現実的には不可能です。また、分析次第では、企業内部の全てが弱みという恐ろしい事態もあるでしょう(^_^;)
4.外的な「機会」と「脅威」を過去データからいくら分析してみても、新たに予想外の事態が頻出するものです。
これだけ激動の世の中であれば、突然予想外のビジネスチャンスやピンチがやってくるものです。机上のデータ分析だけから「戦略策定」をしようとしても、このような外部要因には対応出来ません。また、各部署に細かく策定れた戦略を実践するように要求されているわけですので、予想外のチャンスにもピンチにも身動きが取れません。
5.そもそも過去データの分析をベースにした「戦略策定」なので、新規性のある戦略はあり得ず、結論は、低価格化戦略か特定分野への資本集中化戦略という平凡なものばかりです。
新規事業や歴史のないベンチャーにも、過去データが存在しないが故にこの分析は使えません。 余談ですが、「経営」は「診断」するべきものではなく、「戦略」は「策定」するべきものではないと日々感じています。
6.机上での分析をベースにしているので、現場の状況とはかけ離れたものになってしまう。
以上、問題点を取り上げましたが、結論としては、SWOT分析というのは、とてもではありませんが、お勧めできるような代物ではないということです。
しかし、SWOT分析をベースにした考え方は、大型書店のビジネス書コーナー枠のかなりのスペースを割くような、メジャーなものとなっています。 有名なところでは、マイケル・ポーターなどもこれをベースにしつつ、「ポジショニング」という有名な考え方を追加しています。(かなり簡略に申しています)
あと、あちこちで良く見かける「○○○の競争戦略」などと題されたものも、この一派だと考えて間違いないところでしょう。
これらについても詳しいことは省略しますが、業界シェアトップの大企業で、二位との差もあいていて、業界内の競争があまり激しくない比較的安定した企業でないと、取り入れることは止めておかれた方が良いでしょう。(ということは、どの企業も取り入れることが出来ないのも同然!?)
私がこのようなことがはっきりとわかるということは、世のコンサル屋さんも、ウスウス気付いていてもおかしくないはずです。
そうです、おそらくはわかっている方々もいらっしゃることでしょう。
ではなぜ、SWOT分析及びそこから派生する戦略が、これだけ声高らかに語られるのでしょうか?
【理 由】
1.分析の結果、膨大な量の報告書が生まれます。膨大な量の報告書をクライアントに提出することで、多額のコンサルフィーを請求しやすい面があります。コンサル屋としては、商売上おいしい(^_^;)
2.大企業の部門担当者自身が、戦略に責任を負いたくないため、コンサルを採用し、責任回避する場合があります。コンサル側としても、報告書には、多岐にわたっての細かな指示がなされており、企業側が全てを完璧に実践し切れないことはわかっいるので、もし成果が出なくても、企業側が完璧な実践をしなかったことが原因であると言い訳する余地があります。
双方とも責任回避をするのに都合が良いということがあります。
3.MBAコースとかでデフォルトで教えられていることなので、受講した方なら、おそらくは無条件で「正しい」ことだと思い込んでしまっています。
4.書棚にたくさん目立つように置いて販売されていることから、一般読者が、世の中の時流だと思い込み、正しいことだと洗脳されてしまいがちです。
少しばかりベタなお話もさせていただきましたが、このダメな分析が採用されるワケがおわかりいただけたのではないでしょうか。
前回、今回と、マーケティングを考える時の「常識」だと思われているものの代表的な考え方が、いかにダメなものかをご説明いたしました。
これらを部分的に修正したり、新規に要素を追加したりしたところで、かなりの無理があることは間違いありません。
例えば、(社)日本マーケティング協会監修の『インターネット・マーケティング・ベーシックス』(日経BP社)という教科書的な書籍が手元にありますが、すばらしく優秀な方々による執筆にもかかわらず、敢えて話を4Pからスタートしようと決められたので、4Pに入らない事項も無理矢理どこかに押し込まないといけなかったりして、しなくても良いご苦労をされていると感じてしまうのは、私だけでしょうか?
まるで、どんどん拡大する憲法九条の解釈論議のような展開となっています。
残念です。
また、よって立つ思想的基盤もないのに、単に「○○マーケティングが新しい」と、続々登場するマーケティングのトレンドを追いかけることにも、あまり意味がありません。
私達は、このようなものに振り回されない全く新たな地平からマーケティングをスタートさせていきましょう。
まず必要なのは、マーケティングについての新しい考え方、発想の仕方の枠組みです。
それに先立ち、考えていくのに前提となる思想的基盤をご紹介する必要があります。
次回は「暗黙知とは?」をお話させていただきます。
《2002.11.5追記》 私に対して投稿メールをいただく中で、あまりにも、決まりきったパターンが多くいただきましたので、ここに追記させていただきます。
まず、SWOTが有効という立場から、発言したいのであれば、少なくとも、世界中でそれによる成功した有名事例を私にご紹介していただきたい。少なくとも、有名な失敗事例は厳然として存在しているわけなのだが。。。
あと、SWOTが有効であるとの思想的根拠を示していただきたい。
私としては、「要素還元主義」に陥っているということで一蹴してしまっている。
それに加えて、氏名、所属企業名、役職を明記していないと、いくらメールをお送りいただいても、無視いたします。
初対面の人間から、コメントを求めたい場合には、常識であると思っています。
私のサイトは2チャンネルではありません(^^;
【プロフィール】
咲本 勝巳(さきもと かつみ)
1965年京都生まれ。ネットビジネスとマーケティングのコンサル業。
住宅・住設・インテリアメーカーのマーケティング会社勤務を経て独立。
秋から年末にかけて開催予定のいくつかのイベントに関わっています。
まだ夏だと思っていても、今から準備していかないと、間に合いませんからねえ。
http://www.sakimoto.biz/
mailto:sakimoto@tokeidai.net
(ご意見・ご感想・ご提案お待ちいたしております)
(2001/07/23)









