2001/10/22 月曜日

「21世紀型マーケティング」(#008)暗黙知とは?(4)~21世紀型マーケティングの姿~

Filed under: マーケティング, 認知論 — 咲本 @ 14:32:44

『日刊「WEBのツボ」 ~次世代WEBマーケティングを読む~』に掲載
http://www.soho-union.com/

【○】本日のお題 「21世紀型マーケティング」(#008)    ━━
咲本@時計台ネット
▽ 暗黙知とは?(4)~21世紀型マーケティングの姿~

私の言う「暗黙知理論」に大きな影響を受けているマーケターがいます。
『インビジブル・マーケティング』(ダイヤモンド社刊)を著したハリー・ベックウィス氏です。

インビジブル・マーケティング―「見えない商品=サービス」を売り込む四つの鍵

インビジブル=目に見えない商品・サービスということを主題にしいているのも、いかにも暗黙知的ではあります。
が、「はじめに」の文章でそれは決定的となります。

『頭の中で鳴り響いた。「仕事とは、個人的なものだ」
この場合の「仕事」とは、ビジネスのことだけではない。人間として私たちの個人的 な営み全体を指すのだろう。つまりビジネスのおいて、人間的な側面ーー乱雑で、感 動的で‥‥‥要するに人間なればこその側面ーーはただ重要というだけでなく、「す べて」なのである。すなわち、私たちはフィーリングの世界というインビジブルな未 知の領域に飛び込んでいかねばならないのだ。』

この場合の個人的とはpersonalの訳です。意味合いとしては「人格的」とも訳せるこ の語は、マイケル・ポランニーが大著『個人的知識』で語るパーソナルなことこそが 普遍的なものとなるとの主張と酷似しています。
そのことをふまえないと、なぜ突然、「仕事とは、個人的なものだ。」などと言い出 しているのか、理解し難い表現です。

『できるマーケターは、思考のための素材がぎっしり詰まった場所を探している。何かのイベント、面白い動き、ちょっとしたデータなど。だが、どれも一見しただけでは、はっきりわかるものではない。これらインビジブルで雑多な情報の中からおいしいものだけを選び取り、自分なりにアレンジ出来るマーケターこそが、ビジネスに変革のパワーを注入できる。アイデア、戦略、戦術。ときに私たちが望んでいる答は答ではなく、ある問題に対する新しいモノの見方であることが多い。たとえば、例の帽子にある言葉、「仕事は、個人的なものだ」。
そして、突然、霧が晴れる。
あなたが「違い」を生み出し、そして、新しいモノの見方を手に入れられるよう願っている。』

そうです。
暗黙知理論をベースにしたマーケティングにおいては、ちょっとしたテクニックを提示するようなものではなく、ある問題に対してパーソナルにコミットメントしていくための新しいモノの見方を提示していくものです。
コラムのテーマにさせていただいている「21世紀型マーケティング」というものの基準を強いて申しますと、この点をこそ第一に挙げておきたいと思います。

次回以降は、「暗黙知」以外の側面から21世紀型マーケティングの視点を探索していくことにいたします。

【プロフィール】
咲本 勝巳(さきもと かつみ)
1965年京都生まれ。マーケティングという言葉にとても違和感を持つマーケティング のコンサル屋。
住宅・住設・インテリアメーカー向けマーケティング会社勤務を経て独立。
20日、21日と組合メンバーで合宿して、今後の方針を議論いたしました。20日 夜は、当然の如く飲み会となってしまいました。どうも飲み過ぎてしまったようで、 21日の深夜となった現在でも、二日酔いが抜けません。かっちり二日間、体のダル さが残る結果となってしまいました。いつになく、コラムの行数が短いのは、そのせ いかもしれません(笑)

http://www.sakimoto.biz/
mailto:sakimoto@tokeidai.net
(ご意見・ご感想・ご提案お待ちいたしております)
(2001/10/22)

2001/10/15 月曜日

「21世紀型マーケティング」(#007)暗黙知とは?(3)

Filed under: マーケティング, 認知論 — 咲本 @ 14:39:01

『日刊「WEBのツボ」 ~次世代WEBマーケティングを読む~』に掲載
http://www.soho-union.com/

【○】本日のお題 「21世紀型マーケティング」(#007)    ━━
咲本@時計台ネット

▽ 暗黙知とは?(3)

先人の知恵を結晶させたものの中から多くを学べる場合があります。
言葉尻だけを捉えるのではなく、暗黙知的に想像力を羽ばたかせることによって、書かれている以上のことを「知る」ことが出来ることでしょう。

その好例として、現役近江商人である二六製作所Webマスター村上さん(註1)に教えてもらった近江商人「商売の十教訓」をご紹介させていただきたい。

1、商売は世の為、人の為の奉仕にして、利益はその当然の報酬なり。
2、店の大小よりも場所の良否、場所の良否よりも品の如何(いかが)。
3、売る前のお世辞より売った後の奉仕、これこそ永遠の客をつくる。
4、資金の少なきを憂うるなかれ。信用の足らざるを憂うべし。
5、無理に売るな、客の好むものも売るな、客の為になるものを売れ。
6、良き品を売ることは善なり、良き品を広告して多く売ることはさらに善なり。
7、紙一枚でも景品はお客を喜ばせるものだ。つけてあげられるもののない時は笑顔を景品にせよ。
8、正札を守れ!値引きは却って気持ちを悪くするくらいが落ちだ。
9、常に考えよ、今日の損益を。今日の損益を明らかにしないでは寝につかぬ習慣にせよ。
10、商売には好況、不況はない。いずれにしても儲けねばならぬ。

いかがでしょうか?
この教訓のひとつひとつを噛み締めていただきつつ、暗黙知理論でいう創造的想像力 (creative imagination)を使っていただくことにより、ネット上のビジネスを含む、 あらゆる商売にとってのたいへん有効なマーケティング戦略のベースとすることが可 能となります。(註2)

次に、結果的に暗黙知理論的にすばらしい試みとなっている事例をご紹介いたしまし ょう。
コンパダ・ドットコム http://compada.com/
こちらの第1弾企画として、立命館大琵琶湖草津キャンパスと草津駅の間に居酒屋を オープンさせたいというオーナーさんが、地元のゼネコン秋村組へ依頼されました。 本来なら建物を建てておしまいというところですが、居酒屋のターゲットは明らかに 学生なわけで、ならば、内装やメニュー、器のデザイン、広告用のチラシデザイン等 々を学生から知恵を出してもらい、それを元に、地元の陶芸家や伝統工芸家、インテ リアデザイナー等々に具現化してもらおうという企画です。
居酒屋オーナーは当然、建築云々以上に繁盛店にしたいことが目的、学生達は通学路 に自分達の考える居心地の良い居酒屋のアイデアを具現化してもらえるという、双方 にとって嬉しい企画となっています。
日頃からゼネコンのあり方を模索し続けている秋村組は、ゼネコンとは、単に建物を 建てるという役割を負うのではなく、より良い地域・街となるようなコーディネート をする役割を担うことなのかもしれないという仮説を実践しているわけなのです。
学生、地元の職人、ゼネコンそれぞれの暗黙知を駆使して実現されるお店は、きっと 多くの地域の方々から愛されるお店となることでしょう。(註3)

このような発想は、某マーケティング系ネットベンチャーの方々の発言や、よく耳にするコンサルティング会社のマーケティング論をいくら勉強してみても、到底出てく るものではありません。
我々は暗黙知を切り捨てていたり、無視して論じられているマーケティング談義ほど無用の長物はないという物差しを持っても良いと思います。

尚、これはマーケティングだけを捉えて言っているわけではなく、経営戦略全般も然り、アカデミックな研究全般においても然りということです。

この連載を1ヶ月以上ぶりに書き始めましたが、その間、先月26日に阪本啓一氏の 新刊『スローなビジネスに帰れ』が発売となりました。
氏の「商売原論」たる同書にも、常盤文克氏の書を引用しつつ、「暗の知」「黙の知 」(インビジブル)という概念に大きな注目をされ、論を展開されています。(註4)
私のようにマイケル・ポランニー云々というわけではありませんが、結論的に私がうまく表現出来ないところを明快に語っておられ、たいへん参考になりました。
スロビィ3号として、おすすめです。(註5)

来週も引き続き、「暗黙知とは?」をお送りします。

(註1)二六製作所 http://www.26magnet.co.jp/

(註2) 詳しい解説は、大阪商人?の南さんのメルマガバックナンバーをご参考にしていただければかと思います。
http://www.q-seven.co.jp/e_business/success_1.htm

(註3)その他、秋村組は数多くの想像力を掻き立てられる取り組みをされています。 興味のある方は、下記URLをご覧下さい。
http://www.ap-world.com/
http://www.tsuchinoko.com/
http://cosmic-soup.com/
http://www.warm-s.com/

(註4)阪本啓一『スロービジネス宣言』(日本経済新聞社)
スロー・ビジネス宣言!

(註5)ちなみにこの書を通称『スロビ』と言う。Webookしんのすけ氏によると、「ス ロビィとは、本書を読んで感銘を受けた人が、人に勧めるときに自分を名乗る名称で ある。」とのこと。1号は阪本氏ではなくなぜだかしんのすけ氏。2号が阪本氏。で、 3号という栄誉を阪本氏からいただいた。(笑)

【プロフィール】
咲本 勝巳(さきもと かつみ)
1965年京都生まれ。マーケティングという言葉にとても違和感を持つマーケティングのコンサル屋。
住宅・住設・インテリアメーカー向けマーケティング会社勤務を経て独立。
6日の第1回関西ベンチャー学会経営戦略研究部会シンポジウムにご参加いただきました方、どうもありがとうございました。
まだ詳しくは言えませんが、年内に再度、阪本啓一氏をご講演に招聘いたします。
私自身は26日に学研都市で講演いたします。お近くの方がいらっしゃいましたら、よろしくです。
http://www.ki21.jp/information/koho/info_plaza/011026/index.html

http://www.sakimoto.biz/
mailto:sakimoto@tokeidai.net
(ご意見・ご感想・ご提案お待ちいたしております)
(2001/10/15)

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