2002/2/24 日曜日

「21世紀型商売戦略」(#012)オーケストラのブランド論

Filed under: マーケティング — 咲本 @ 21:42:30

『日刊「WEBのツボ」 ~次世代WEBマーケティングを読む~』に掲載
http://www.soho-union.com/

【○】本日のお題 「21世紀型商売戦略」(#012)  ━━
咲本@時計台ネット
▽ オーケストラのブランド論

2月3日22:30以降、たまたまNHK教育テレビをかけるとサー・サイモン・ラトル指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団演奏でベートーヴェン交響曲第5番ハ短調作品67「運命」が始まったばかりであり、それを聴きながら、執筆を始めだしたところです。いつも、参考テキストをベースに持論を展開させていただいているわけですが、今回は、いつもよりラフな形でお話を進めさせていただきたいと思います。

と、書きはしましたが、筆は止まったまま、演奏が終わるまで寒イボが立った状態で最後まで聴き続けてしまいました。
おまけに、アンコール曲、ドボルザーク作曲「スラヴ舞曲変イ長調作品46-3」でラトルがスタートの指揮をした直後、ティンパニー奏者として後ろに引っ込んで指揮者不在のまま曲が進行するというパフォーマンスがあったりしたことなども思わず見とれてしまいました。

聴いた印象は、アグレッシブ、熱いパッション、若々しいということを激しく感じ、それにもかかわらず、決して雑なところがなく、かなり細かいところまで行き届いた練習がなされているのだなあといったところです。

サウンドの作り込みは、ズービン・メータのように重低音をベースにして、ハーモニーを重視して構築するといったものではなく、パッションや若々しさを直接表現したい点がかなりあるようで、高音楽器重視のサウンドとなっていたように感じました。

そんな感想はさておいて、企業のブランド戦略に、このオーケストラの演奏から知見を得られることは出来ないものでしょうか?

企業がお客さんに提供する価値は、優れたオーケストラのコンサートのような体験をもたらさなければならず、提供する価値もひとつのアートに対する感動に近いようなものが理想ではないかと思えるからです。

まずこのように考えていくのにあたって、指揮者って何をしているのかをおさらいしておきましょう。

指揮者の存在は、コンサートを迎えるまでの時期が一番たいへんであって、コンサート当日は、飾りものに近い程度であるようなものです。

では、当日に至る練習はどのようなものであるのでしょう?

その現場では、大規模編成の曲の場合には、100名以上の楽団員を前にして、「全員」の発する音を聴いて常に把握しています。
把握するだけではなく、
1.自身の考えるサウンドとなるように、微妙な音の配分の指示を行う。(コンサートではスタジオ録音のようなミキサー操作で処理することが出来ません)
2.表現における大まかなコンセプト。
3.個別部分での微妙な表現の指示。
4.個々の部分でのサウンドのバランス変化の指示。
5.ソロ表現における指示。

これらを全体、部分、個人という全ての層で指示していき、ひとつの作品として仕上げていくのが、指揮者の役割です。

当然、指揮者の力量によって、仕上がるレベルが違ってくるわけですし、指揮者の表現指示によって、仕上がる作品のイメージが大きく変わってしまうわけで、同じような意味において、会社社長の力量と対比出来るような問題であるわけです。

指揮者でも一定の求心力のある人物でないと、一流といわれるオーケストラであればあるほど、全体を引っ張っていくことが難しくなります。
果たして経営者が組織所属メンバーのひとりひとりの実力と行動とをどれだけしっかりと把握しているのかは、ひとつの作品を構築するのにはたいへん重要なことです。
優れた経営者で、組織の全てに行き届いた指示と実践がなされていれば、アンコール曲演奏でティンパニーを演奏する余裕さえ、見せることが出来るのでしょう。

また、細かい部分でいえば、各セクション、例えば、トロンボーン部門が曲を演奏するのに、指揮者の方針に従った形で、どのように「ハモる」のかということは、セクションとしての練習という点での取り組み次第です。
トロンボーンを6年間吹いていた経験のある立場から申せば、中途半端にハモるのと、完璧にハモったのとでは、本人を含めて聴衆の感動が全く違います。

社長の指示を完璧に反映させた「ハモり」を企業内の小さな部署ごとに、提供出来ているでしょうか?
ハモるのには、そのメンバー同士のかなり繊細な神経の使い方と、協調性とが必要となります。

経営者としては、組織内の人材で、優れた人材を目立たせて、それによってのアピール力を高めようとする場合があります。
ちょうど、交響曲の中に、ある楽器のソロがあり、その奏者が天才的な奏者であれば、それによって聴衆を魅了することが出来るのと同様に。

オーケストラには、サウンドの個性がかなりあって、例えば、ベルリンフィル、アムステルダム・コンサルトヘボウ管弦楽団、ロンドン交響楽団、ボストン交響楽団、NHK交響楽団では、全く個性が違います。
これは、今まで培ってきた企業文化の違いのようなものなのでしょう。

今、超一流といわれている交響楽団は、主として過去に偉大な指揮者によって、長年にわたって育てられてきた場合がほとんどのようです。
一流指揮者と接する機会があっても、例えば、ニューヨークフィルやNHK交響楽団とかの場合は、「育てる」指揮者に恵まれなかったが故に、「一流」ではあっても「超一流」ということにはならないでいます。
企業を育てるという意味での経営者の力量は、たいへん重視されるべきものではないでしょうか。

先程、指揮者が一人一人を把握していると申しましたが、そのように経営者が把握しながら的確な方向性を示すことが必要なのは言うまでもないところではありつつも、組織内に所属する立場から最も大事なのは、時々刻々と変化する立場、ある時は企業としての主旋律を奏でたり、ソロ演奏をしたり、ある時には、伴奏に徹していたり、他パートとハモることに気を遣っていたり、ひとつの作品完成という全体を見渡しながら、その時々において、全員がどれだけ的確な動きが出来ているのであろうかとい うことです。

ひとつのすばらしい作品を作り上げないと、聴衆にも感動は伝わるわけはなく、そういった意味では、企業内にかかわるパートタイマーさん、外部スタッフさんも含めてそのような意識の徹底がどれだけ出来ているかによって、ブランドの良否は決まってくるのではないでしょうか。

そのように見渡しますと、オーケストラによる作品発表と比べますと、企業のブランド戦略のお粗末なやり口の実態が、とても良く見えてくるように思います。
ブランドとして成立させるためには、かなりデリケートなところまでへの配慮・実践と、全体的な方向性に向けての関係者全員が目指していくことの必要性を感じます。

中でも企業としての大きな問題点は、
1.ハモっていない(組織内人材が細かな部分を含めて進む方向性と協調性発揮によるパワーが出せていない)
2.指揮者が全奏者を把握出来ていない(指揮者は、一人の音のミスを見逃しません。作品の完成度にこだわるからです。ブランド構築のために経営者として、どれだけ社員に目を行き届かせて、それを自身の持つ趣旨に誘導していっているのでしょうか)
3.日々のパート練習にハイレベルを望む(ホルン、ヴィオラ、クラリネットとか、多数のパートが存在しますが、パートとしての日々のレベルアップと協調性、突然の指揮者による指示にもパートとして柔軟に対応出来る態勢を持っておく必要がありす)

システムコンサルティング会社で新卒者を半年間の研修で企業文化に染めてしまい、皮肉な視線からは、まるで新興宗教団体扱いされている企業を知っていますが、それも致し方ない企業戦略かと思ってしまいます。(賛成はしていませんが)

その他の問題としましては、いくら素晴らしい指揮者であっても、演奏する交響楽団のレベルが低すぎますと、指揮者は十分な表現を実現出来ません。
私が十代前半の頃によく聴いた関西の某交響楽団などは、全体的なスキルが低いために、例えば高い演奏スキルの要求されるストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」を演奏した時などは、ミスが多い上に、演奏するだけでアップアップという状況が見え見えすぎて、とてもではないですが、普通に聴けるレベルには達していませんでした。

企業のブランディングについて、あまりにも大雑把な認識で取り組まれている企業が多く見受けられるが故に、今回は今までとは全く違った角度からお話させていただきました。

あなたの企業は、指揮者の一声で、聴衆に感銘を与えるサービスを展開出来る企業となっているでしょうか?

【プロフィール】
咲本 勝巳(さきもと かつみ)
1965年京都生まれ。マーケティングという言葉にとても違和感を持つマーケティングのコンサル屋。
前回のコラムはあまりにも急いで書きすぎましたため、表現がおかしなところが多数ありました。加筆修正をしたものを、下記URLにアップさせていただいております。
もしよろしければ、一度目を通してみて下さい。

などと言いながらも、今回のコラムも、ギリギリになって一気に書いてしまいましたので、次回もそのようなことを言っているかもしれません(汗)

2月6日・13日の2回連続で、奈良県大和高田市で(財)奈良県広域地場産業振興センター主催の講演を行わせていただきます。
もしご興味をお持ちいただいた方は、直接下記URLまでお問い合わせ下さいませ。
http://www.mahoroba.ne.jp/~jibasan/
3月14日は石川県庁主催で二代目商店主向けの「商売戦略」講演をさせていただきす。

http://www.sakimoto.biz/
mailto:sakimoto@tokeidai.net
(ご意見・ご感想・ご提案お待ちいたしております)
(2002/02/04)

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