2002/3/18 月曜日

「21世紀型商売戦略」(#014)戦略形成への道 (2)

Filed under: 経営戦略 — 咲本 @ 21:14:02

『日刊「WEBのツボ」 ~次世代WEBマーケティングを読む~』に掲載
http://www.soho-union.com/

【○】本日のお題 「21世紀型商売戦略」(#014)  ━━
咲本@時計台ネット
▽ 戦略形成への道 (2)

先週のコラムでは、戦略を「形成」していくための数々の条件をお話致しました。
今回はその中の条件として提示した、

6.経営の基本理念を見つめ直し、明確にし、それを末端のパートさんを含めて、それに沿った行動が出来るようにする。これは戦略形成にとって、重要な要因となります。雪印乳業のように経営理念でエエ格好をしながら、実践部分でボロボロであれば、意味がありません。徹底的に社内に行き渡っていて、スタッフ全員がそれを心の底から信じ切っている必要があります。場合によれば、倫理的に問題であっても構わない場合もあるようです。例えば、フィリップモリス社はいくら社会的にバッシングを受けても、社員一同、タバコは素晴らしいものであるということを深く信じ切っているようです。とても業績好調です。

という点について補足説明致します。

と言いますのも、上記の点について実践出来ている企業というのは、ほんの一握りだけなのではないかと思われるからです。

まずは、雪印乳業の企業理念を見てみましょう。
http://www.snowbrand.co.jp/brandmsg/ms2.html

私たちは「乳」をはじめとして、健やかな土と自然がはぐくんだ食品を、いきいきとしたおいしさに仕立ててお客様にお届けします。そしてそのことが、お客様にとっての食べることの楽しさ、健康、うるおいのある生活につながっていくことを、かけがいのない誇りと考えます。さらに単に医学的な「生命」だけでなく、人々の尊厳・希望・活力の姿である「生命」を輝かせるお手伝いができることを喜びとしていきます。

Webページにはこのように発表されています。

しかし、本当に経営陣からスタッフ一同全てにわたって、この企業理念を本気で信じ切って、日々の行動ひとつひとつに反映していると言えるのでしょうか?
この企業理念をベースに、なぜ、バターの品質保持期限延長という行為が発想されるのでしょうか?
私はこのような企業理念を作ってみても、何も意味をなさないと思います。

それに対して、例えば、ソニーの企業理念は、やはりさすがと言えるものです。とりわけ、戦後間もない1946年に創業者、井深 大氏が書かれた設立趣意書は、今に至るソニーにまで基本的スピリッツは受け継がれて来たものであることは、私のような部外者にも良く理解出来ます。感動的です。
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/CorporateInfo/History/prospectus.html

長文ですので引用は致しませんが、まだ何もこれと言える事業の存在しなかった時点で、しかも戦後間もない時期に、このような「会社設立ノ目的」や「経営方針」を明確にさせ、組織全員に深く浸透させつつ、実践の場での行動原理として行ってきたからこそ、今のソニーがあるわけです。

また、2000年に大きな事件となりました参天製薬の目薬毒物混入恐喝事件におきましても、参天製薬の企業理念が、単なるお題目ではなく、企業に活きていたために、郵便物が届いた翌日には、全国の目薬店頭回収措置を講じられたものだと認識します。
http://www.santen.co.jp/com/seihin_kaisyu.html

これが雪印乳業であれば、個人的な予想ながら、郵便物の消印によって東京からの郵便物だったなら、関東圏だけ回収という措置だったのかもしれません(笑)

尚、参天製薬の株主に対するアニュアルレポートにも、社長として下記のように発言されています。
http://www.santen.co.jp/share/2000annual_j/j04.pdf

なお、当期終了後に発生した重要事項として、「一般用目薬の全製品回収」があります。異物を混入した一般用目薬が6月14日に当社宛に送付され、金銭的要求がありました。当社では消費者の方々の安全こそ最優先と考え、即刻情報を開示すると同時に、一般用目薬の全製品回収を決定し実施しました。一連の意思決定は、「患者さんや患者さんを愛する人たちを中心として、社会へ寄与する」という参天製薬の基本理念に基づいて行われました。当社は、将来的に同様の事件の再発防止のため、不正加工防止策として一般用目薬の外箱を、「ひとみ・すこやかラッピング」の新包装で販売を7月より再開いたしました。

このような基本理念の社内的浸透によって、下手をすると負のイメージとなりかねない思わぬ状況を向かえることになっても、逆に、イメージアップに繋げて、決算報告を見る限りは、業績がアップしています。

フィリップモリス社のことは省略致しますが、いずれに致しましても、競争力の高いいわゆる成功企業と言われる企業には、そのようになるに至る理由があってのことであって、たまたま当たっただけの企業では、長続きは致しません。

世の中の変化も非常に激しい、経済に右肩上がりの流れも感じられない、どちらにしましても、バブルの頃と同じようにビジネスを続けて儲けることが誰の目からも不可能であって、大企業の倒産が不思議でなくなった時代にあっては、過去の経験に引きずられることのない、柔軟な未来志向の発想が、企業に要求されざるを得ません。

それをどのように実現するのかという第一歩が、私は企業の基本理念の明確化と浸透であると考えます。

それは形だけのものではなく、スタッフ全員が深く納得(というより内面化)出来、100年経っても揺るぎないものでありつつも、具体的な方向性が認識出来るものであります。

そのようなものが企業内に存在すればこそ、やってみないとわからないようなイノベーティブな企画にも、基本理念と合致していることで邁進出来る社内的パワーが得られます。

また、一見トレンディな企画があったとしても、基本理念に合致していなければ、実践しないとの判断も容易です。

強いブランドがあくまでも強いのは、この点がしっかりしているはずなのです。

基本理念が明確で浸透している企業は、未来志向的な事業を行うのか行わないのかについての迷いがなくなり、むしろ判断が明確化します。

組織として、若手の社員であっても現場での暗黙知を含めての創発的発想を、企業として受け入れ、それを活用していくにあたって、企業の人材がどうなるのかやってみないとわからないということで、普通なら発言を控えるであろうことを吸収して活用出来る組織構築の一番最初にすべき企業の取り組みが、この基本理念の構築・浸透です。

未来志向となればなるほど、やってみないとわからないことばかりとなってしまい、そのような状況で、やるかやらないのかの判断を下せるのは、明確化され浸透した、企業の基本理念があるからなのです。

佛教もキリスト教もイスラム教もオウムも、全てオッケーという企業は、組織に所属する全員が迷うことになるという意味では、フィリップモリス社の事例ではありませんが、うちの企業は○○教だと、スタッフ全員に浸透させ、それについてどうしても不服な方は、企業から去っていただくという営みが、今最も必要とされていることは間違いのないところだと、率直に感じます。

次回もこの論議を深めていく予定です。

【プロフィール】
咲本 勝巳(さきもと かつみ)
1965年京都生まれ。マーケティングという言葉にとても違和感を持つマーケティングのコンサル屋。

先週申していたイザコザも解決した様相となりました。

二度目の14日金沢講演は、ホント、楽しみにしていただけのことがありました。
市内で最もオシャレな商店街だけあって、商店主のレベルが高いです。(地価も高し)
某姐さん、某花屋さん、某カバン屋さん、某建築家さん、某役人さん等々、ツワモノ揃いでした(笑)

3月18日は「SOHO Kansai 2002シンポジウム」にパネラーとして出演させていただきます。このメルマガ配信時にはイベントが終わっているのかな(謎)>担当石井さん
3月20日は日本新薬(株)様社内セミナーで「グレート・カンパニーへの道~ナレッジ・マネジメントの未来」と題して講演させていただきます。
目下、講演内容を試行錯誤中。講演ギリギリまで練る予定。

http://www.sakimoto.biz/
mailto:sakimoto@tokeidai.net
(ご意見・ご感想・ご提案お待ちいたしております)
(2002/03/18)

2002/3/11 月曜日

「21世紀型商売戦略」(#013)戦略形成への道

Filed under: 経営戦略 — 咲本 @ 0:32:05

『日刊「WEBのツボ」 ~次世代WEBマーケティングを読む~』に掲載
http://www.soho-union.com/

【○】本日のお題 「21世紀型商売戦略」(#013)  ━━
咲本@時計台ネット
▽ 戦略形成への道

昨年7月23日発行の本メルマガコラム「SWOT分析は使えない」の文中で、私は次のように書きました。
『余談ですが、「経営」は「診断」するべきものではなく、「戦略」は「策定」するべきものではないと日々感じています』と。

今回はこの余談でさらっと発言した「戦略は策定するべきものではない」ということについてお話致しましょう。

私流に言えば商売戦略、一般的にはマーケティング戦略を考えていくのに、「策定」しようとすれば、普通は、例によって強み・弱みを分析するところから始まります。ところが、この強み・弱みが時と場合によってどちらにでも変わってしまうものなのです。

喩えで言いますと、長身で足が長くスマートな体型は、モデルとしては強みになりますが、相撲をとるには弱みとなります。

企業活動を行っていくにあたって、様々な状況に出会う際に、ある時には強みともなり、その同じ特徴が弱みともなり得るのです。

更には、
1.いくら精緻に分析したつもりであっても、その要素をいくら繋ぎ合わせようと、「総合」「全体」にはなりません。
2.環境予測を行おうといくら分析しても、必ず当たるとは言えません。
3.策定しようとすれば、新規性のある戦略は生まず保守主義志向が強くなります。
4.策定するのには、明確な言葉によって表現なされますが、そこには企業内に潜在している暗黙知のことは、全く欠如致します。
5.戦略を思考することと、行動することとが分離されてしまい、現場の状況と合わなくなってしまいます。
6.チャート式参考書のような図示からは、受験勉強には向いていても、何ら創造的なことが生まれることがありません。
など、問題点が多々発生致します。

別に100%否定しようというのではありませんが、結論的には、言うまでもない当たり前の取り組みや、過去に経験してこうすれば間違いないとわかっている場合にだけ分析を重視されれば良いかと思います。

では、戦略を「策定」するのではないとすれば、どのような取り組み方があるのでしょうか?

それは、戦略を「形成」「創発」していくという立場です。

簡単に言ってしまいますと、戦略をどうこう言ってみても、やはり実際にやってみないと、うまくいくかどうかはわからないでしょ、という立場です。
イロイロ打つ手はあるけれど、どれが有効かについては、分析してもわからない。
分析は部分的なことばかりなので、総合的に見る視点がないからです。
暗黙知のような、言葉にはしにくいが企業として打つ手のひとつとして使えそうなものもあったりする。
だったら、企業内部でプロジェクトのことを熟知している者同士が話し合い、最終的には経営者やマネジャーの判断で決めましょうということです。
やってみてダメそうだったら、そこで組織として学習して賢くなりながら、次の手を打ったりしながら進んでいきましょうということです。
いわば、やろうとすることを戦略と称しても良いのか、どうかもわからないような立場です。

このように言ってしまいますと、すごく簡単なことのように聞こえてしまうかもしれませんね。
でも、実際にはそう簡単に取り組めるとは限りません。
いや、企業によっては、たいへん難しいことであると言った方が良いのかもしれません。

なぜなら、企業としてこのような立場で取り組もうとするのであれば、少なくとも以下の点をクリアしていなければならないからです。
※思いつくまま書いていますので順不同です。

1.役職が山のようにある官僚型組織から脱却して、出来る限りフラットな組織を作っていく。出来れば社長室も撤廃して一般社員と同じフロアに机を並べる。

2.戦略を形成していくのにあたって、スケジュールに従った形では進めない。そのような環境から創発的な戦略は生まれない。

3.戦略を形成していく責任者には、数値分析能力ではなく、その問題に関する深い理解と、その背後に浮かび上がる企業内部・外部の様々な事柄について「感じる」能力が要求される。

4.スタッフ一同が忌憚なく語り合える環境が必要。例えば、上司に提出用営業日報には、無味乾燥な箇条書きが並んでいるものではなく、「○○株式会社に営業に行った際、○○課長から○○○との発言が出たので、かなりムカついた」などの、活動の光景が思い浮かべられるような、ベタな記述で書かれていることが望ましい。また、このような環境を持てることが、ナレッジマネジメントのスタート地点ともなります。

5.そのように4.のようなホンネの発言を組織内で出来ない人間を、人事評価として低く扱う。つまり、人事評価システムに、そのような視点を入れるようにする。

6.経営の基本理念を見つめ直し、明確にし、それを末端のパートさんを含めて、それに沿った行動が出来るようにする。これは戦略形成にとって、重要な要因となります。雪印乳業のように経営理念でエエ格好をしながら、実践部分でボロボロであれば、意味がありません。徹底的に社内に行き渡っていて、スタッフ全員がそれを心の底から信じ切っている必要があります。場合によれば、倫理的に問題であっても構わない場合もあるようです。例えば、フィリップモリス社はいくら社会的にバッシングを受けても社員一同、タバコは素晴らしいものであるということを深く信じ切っているようです。とても業績好調です。

7.担当マネジャーが全力投球で突き進もうとしているのに、稟議で一応ハンコを押した立場の上司が、後になって一切文句を言わない。

8.企業内においてプロジェクトに対して、財務評価をする最優先の尺度を1項目だけ明確に示し、それを社内に浸透させる。○○率といった形で様々な評価尺度が存在している中、企業としての最優先して評価する財務評価尺度を明確にすることは、戦略形成とその評価に対して大きなプラスとなります。

9.戦略は朝令暮改となることは、当然のことであるとの認識のもと、予算が柔軟に変化することの出来る仕組みにする。

10.上司も部下も「まいど~!」といったノリで気軽にコミュニケーションが出来る環境にある。文句・進言があれば、社長に直接、率直な意見を言うことが出来る。

う~む。全てクリアするのには、なかなか難しいですよね。

でも、結果的にそのような企業が業績を長年にわたって上げてきていることは、最近翻訳発売された名著『ビジョナリー・カンパニー2』(日経BP社)においても明白です。

つまりは、小手先の戦略をどうするのかが最大の問題ではなく、それに先だって企業の経営の根幹を、どのようなものとしていこうとするのかが大問題なのです。
もうそろそろ、小手先のTipsを模索することは止めにするとして、企業経営の根幹をどうするのかということに、最大の力を注ぐべきなのではないでしょうか?

企業経営を考えることとは、リストラで早期退職者が多数出たから当期は赤字であるが、今後は体力があるので云々という問題では決してありません。
一定部分ではやむを得ないところもあるのでしょうが、企業を知り尽くした有能な人材を斬ることによる人的資産の損失は、数字には出ないだけで大きなものがあるのでしょう。

来週は、戦略形成に至る企業側の取り組みについて、更に深めた議論をしていく予定です。

【プロフィール】
咲本 勝巳(さきもと かつみ)
1965年京都生まれ。マーケティングという言葉にとても違和感を持つマーケティングのコンサル屋。

最近、プライベートな部分でのイザコザがあったりします。
数日前も東京の某女性から、初めてこのような辛辣な発言をしたと言うメールが届きました。
私もこのような辛辣メールは初めての経験でした
丁寧な返信をしたつもりでしたが、私をミソクソに罵倒する立場は変わらないらしくもう勘弁して!といった状況です(泣)
別に、無理矢理押し倒したりとか、そのようなことは当然していませんが、深夜に長電話をしてしまったことと、その内容に憤慨されているようです。
東京に行って直接謝るからと言っても、更に激しく罵倒されます。
因縁の付けられ方からして、相当恨みが根深いようです。
みなさん、こんな場合にはどのように対処されますか?
「戦略」をお持ちの方、「経験談」をお持ちの方、私にアドバイス下さいませ。
相談に乗ってもいいよ、という方も大歓迎です。

「咲本」をキーワードで検索してみると、何でやねん!ということがありました。
本メルマガ執筆陣の岩城真珠さんのWebサイト上で、私の名前が使われていました。
http://pearl.ne.jp/Templates/711.htm
セブンイレブン先払サンプルに、咲本という珍しい姓をサンプルにするとは!やられました(笑)

3月14日は金沢市竪町商店街振興組合様主催で二代目商店主向けの「商売戦略」講演をさせていただきます。
3月18日は「SOHO Kansai 2002シンポジウム」にパネラーとして出演させていただきます。
3月20日は日本新薬(株)様社内セミナーで「グレート・カンパニーへの道~ナレッジ・マネジメントの未来」と題して講演させていただきます。

http://www.sakimoto.biz/
mailto:sakimoto@tokeidai.net
(ご意見・ご感想・ご提案お待ちいたしております)
(2002/03/11)

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