2002/7/10 水曜日

「21世紀型商売戦略」(#002)暗黙知の経営(2)

Filed under: 経営戦略, 認知論 — 咲本 @ 23:54:38

『日刊「WEBのツボ」』に掲載
http://www.soho-union.com/

【○】本日のお題 「21世紀型商売戦略」(#002)  ━━
咲本@時計台ネット
▽ 暗黙知の経営(2)

組織が暗黙知による力をフルに発揮することにより、企業としての力を高めることを可能ならしめるには、どのような組織を目指していくべきなのでしょうか?

この点について、前回は、企業としての基本理念やビジョンの明確化と、それらをスタッフ全員に徹底して浸透させることが重要であることを指摘しました。
このことは主に経営陣が是が非でも取り組まなければならないことです。
経営陣がしなければならないのは、管理すること以上に、企業の進む方向性や求められる人物像がどのようなものなのか示し、スタッフ一同をそちらの方向に導いていく環境を作っていくことの方が、はるかに重要です。

一方、マネジャーやリーダーと呼ばれる立場の方にとって、最も重要な点はどういったことなのでしょうか?

ほとんどの中小企業で良く見受けられる大きな誤解は、役職が付いた人は管理職と呼ばれる立場であり偉い人である。部下に対して、指示・命令・管理を行う立場なのであるという旧態依然たる認識です。

マネジャーやリーダーと呼ばれる立場は、従来型の中間管理職とは全く異なる役割を持つものです。

柔軟な組織を構築して、社員の暗黙知を解き放つには、マネジャーやリーダーには、スタッフ自らが問題の所在を明らかにし、その解決法を考え出させ、自ら権限と責任を持って取り組ませるように、最大限にポテンシャルを上げることが求められます。

マネジャー・リーダーは、上から命令することはほとんどなく、スタッフをいわば顧客として、高い顧客満足度が得られるような「支援」をしていくような立場ということになります。
最近、コーチングが注目されていますが、このコーチングの高いスキルが必要と言い変えることも出来るかもしれません。

結局のところ、部下が「仕事を頑張るためには、なんて居心地の良い職場環境なのだろうか!」と感じてもらうためのお手伝い的側面があるということです。

「命令」から「支援」という、自らの役割への認識を大きく変える必要があります。

なぜなら、部下こそが、例えば営業の場合でしたら顧客と接する最前線なわけで、顧客への高い付加価値を提供をして顧客満足度を大きく高めようとすれば、現場での即断が求められるわけで、そのような意志決定の出来る権限と責任を部下に付与しつつ仕事に取り組んでもらわないと、そもそも高い顧客満足など提供することなど不可能となっています。
権限と責任を持たされていない「ご用聞き」に、高い顧客満足を感じて貰うことは、最早不可能となりつつあります。

勿論、部下への支援の立場だけで済まされるものではありません。

以下、列挙してみましょう。

1.企業の基本理念に基づいた実践の重要性を、深く認識しており、基本理念に基づく具体的なビジョンや行動がイメージ出来る。

2.例え、スタッフが企業の基本理念に反した方法で大きな売上を上げたとしても、企業としてはマイナス評価、場合によれば、解雇されるものであるということを、日々スタッフに浸透させる。つまり、基本理念に反する行いに対して、イエローカード、レッドカードを出すことが出来る。
例えば、営業マンが大きな売上を上げるために強引に売りつける行為を行っていた場合、いくら高い売上を上げたとはいえ、仮に企業の基本理念がお客さまを大切にするということであったとすれば、これに真っ向から反する行いをした営業マンは、企業に貢献したとは言えず、売上を上げたにもかかわらず、イエローカードが出されるべきです。
(経営陣も、基本理念の重要性を解雇も辞さない態度で徹底化すること)

3.部下といつの場合でもホンネで語り合える関係性構築。
「支援」する立場である以上、スタッフが抱えている悩み事を、ホンネで語ってもらえる信頼関係を築かなくてはならない。
威圧的・強権的・硬直的・官僚的・自己中心などの印象を持たれると、絶対にホンネの会話などあり得ません。うわっつらの言葉だけでは言行一致しないので、すぐ部下に見透かされてしまいます。心の底から「支援」している立場に徹しないと、そのような関係性を築くことは出来ません。
また、部下の仕事以外の悩み事にも細心の注意を怠らない。
仕事に集中出来ない要因となるものを出来る限り取り払い、部下が仕事に集中出来る環境を整えていくことは、マネジャー・リーダーの重要な役割です。
(経営陣としては、その関係性に注目することによって、マネジャー・リーダーの能力のレベルがすぐにわかる。でも、経営陣も、社員にとって口先だけ尤もらしいことを言っているのか、心の底からそう思っているのか、行動に矛盾が出てしまうのですぐバレてしまいます。口先だけだと認識された経営陣を持つ企業は、スタッフのポテンシャルを引き出すことなど絶対不可能です)

4.出世したいとか、給料アップを目指したいという理由で、マネジャー・リーダーになるという動機は、あり得ない。
給料については、多い方が嬉しいでしょうが、そのことが大きなモチベーションに直接的に繋がるのかというと、最初に貰った時には効果があるでしょうが、すぐに慣れてしまい、そのことだけで高いモチベーションを維持することは不可能です。
マネジャー・リーダーの個人プレー頼りだけで、企業が好業績を出し続けることなどもあり得ません。
傑出した業績を出し続けている企業は、必ずチームプレーの力が他社より抜きんでているはずです。
スタッフの多大なる協力を得て実現したことを、さも、私の個人的な才能が高かったためと経営陣に訴えるあなたは、企業にとって最もふさわしくない人材です。
仕事への大きな権限と責任を与えられ、必要に応じて部下にもその権限と責任の一部与えていく。
自分のしたいことと、仕事としてすべきことと、企業の基本理念にそった形での貢献が合致することに取り組んでいける、部下もそのような取り組みが出来て喜んでいるというところにマネジャー・リーダーとしての喜びがあるかと思います。
(経営陣としても、このような人材は真っ先に解雇するようにいたしましょう。何をイエローカードと取られるのか早くわかった方が、サッカーの試合でもみんなが戦いやすいです。)

以上、いくつかの点について述べましたが、組織の経営陣、マネジャー・リーダーがこのような方向で組織改革していきませんと、企業内に暗黙知を解き放ち、それによって企業の力を飛躍的に高めていくことは困難であると言えるでしょう。

次回も「暗黙知の経営」として議論を続けさせていただきます。

【プロフィール】
咲本 勝巳(さきもと かつみ)
1965年京都生まれ。eビジネス、マーケティング、組織論、合コン?のコンサル屋。
今月は講演多しです。11日、12日、15日、24日。
よろしければ、一度お越し下さい。詳細は私のサイトに書いてあります。

http://www.sakimoto.biz/
mailto:sakimoto@tokeidai.net
(ご意見・ご感想・ご提案お待ちいたしております)
(2002/07/10)

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