高台寺庭師に観るプロジェクト・マネジメント
『ビジネスにマーケティング☆を走らせよう!』に掲載
http://www.mankai.biz/
「高台寺庭師に観るプロジェクト・マネジメント」
マーケティング・コンサルタント 咲本 勝巳
こんにちは!咲本です。
発行人であるにもかかわらず、今回号で初めてメインコラムを書きます。
これから月1度ペースで書いていく予定です。
今後ともよろしくお願い申し上げます!
▼高台寺春のライトアップを見学
今年3月4日、翌日から約2ヶ月にわたって開催される高台寺、春のライトアップの記者発表の席に、お知り合いのコネで特別に参加させていただきました。
高台寺とは、京都祇園にある有名なお寺でして、毎年春と秋に行われています。
ライトアップ開催期間は、ファンが多いこともあり、いつ行っても行列待ち状態となります。
今回の開催テーマは、「春宵(しゅんしょう)」。
地中から沸き出す生命力をほのかな光で表現しています。
注目すべきは、「古いものだけが好き」という方には嫌悪され、アート好きな方なら、「素晴らしいインスタレーションに遭遇して感動した」とでも言わせしめるものであることなんです。
ちなみに、現在開催中のライトアップの写真↓をご覧下さい。
http://www.kodaiji.com/kongetu/0303/index.htm (その後not foundとなったので、参考になるのかどうかはともかくとしてコラム執筆から3年後の事例写真をご覧ください↓)
http://sakimoto-060319kodaiji.buzznet.jp/
どのようなご感想をお持ちになりましたか?
高台寺としては、このイベント成功イメージは、「骸骨を見た」ような気持ちの悪い感想を持った方と、感動した方とが半々に分かれることを目指されているらしいのです。
つまりは、「芸術」を提供しているわけですので、岡本太郎『今日の芸術』を引用するまでもなく、「不快感」も含めて観た方の魂を揺さぶるだけのものを提供したいということです。
このようなことを趣旨として開催し続けることが出来るのには、高台寺独特の理由があります。
▼プロジェクトリーダー、公認庭師北山さんという存在
このライトアップ総合プロデューサーは、高台寺公認庭師の北山さんという方です。見学時には、この北山さんから直接お話をお伺いする機会も得ました。
通常のライトアップですと、照明デザイナーに依頼して、格好よく光を当ててもらえば話は済むのですが、高台寺はライトアップを始めた当初から、北山さんに「一任」してきています。
つまりは、北山さんが「プロジェクトリーダー」として、この「事業」の責任者として、ずっと取組んで来ていらっしゃるわけです。
由緒ある有名な寺院の公認庭師というのも、名誉はあるのでしょうが、高いクオリティが求められるわけでして、それに加えて、ライトアップもということですと、当初は経験のなかった照明について自らプロデュースしなければならないという重圧もあり、ご自身のプライドやスキルを見つめ直しながら、大変な覚悟があったのではないかと想像してしまいます。
▼寛容でクリーン、前向きなお寺
高台寺の経営?の仕方は、通常の寺院とは違った点が見受けられます。
- 収入源は拝観料がメインで、檀家や企業からの寄付を一切拒否している。 →だから、利権を求める人達によって、シガラミだらけになることがない。
- ライトアップについては庭師の北山さんに丸投げして、一切口出ししない。 →完成して初めてどんなライトアップなのかを寺側が知る。今回のライトアップも僧侶の方々は、あまり気に入ってないのにもかかわらず、北山さんの美意識を信用しているので、それ対してとやかく言わない。
- やったことのないことにも、積極的にチャレンジする精神を持っている。 →例えば、ライトアップ以外にも、英語版としてFlashを駆使した過激なWebサイトを立ち上げている。寺院としては珍しい試み。http://www.do-not-zzz.com/
▼北山庭師のプロジェクト・マネジメント
このような、ある意味では民間企業のような柔軟性を持つお寺に一任されて始まったライトアップ・プロジェクトとは、どのようなものだったのでしょうか?
- まず北山さんは、照明のこと、枯山水のこと、特徴的なオブジェ群など、それら全てにわたって高いスキルを持たれている。照明だけを扱う通常の照明デザイナーとは明らかに違う。
- 北山さんの趣旨・哲学が明確かつ深いものであり、それを関係者に対して情熱的に語り理解してもらおうという方である。
- 金儲けを第一目的として近寄ってくる人間を受け入れず、北山さんの趣旨・哲学に深く感銘した人間だけをプロジェクトに集める。 →高台寺としても、企業からの寄付を受け付けないためにシガラミがない。
- そのために、金儲け主義の会社が近寄ってきても、お金目的だけではどう考えても割りに合わないと思ってしまう無理難題を並べ立て、それらを排除する。 →逆に、お金儲け第一というよりも、北山さんの趣旨・哲学に賛同している会社であれば、それは無理難題とは受け取られず、「面白そう」と受け取られる。
- 北山さんの趣旨・哲学を関係者全員が深く理解しているので、メンバーからの提案も的を得たものが多く、試行錯誤していっても、思わぬ素敵な発見が出易い。
- 高台寺からのゴールの設定は、イベント開催前までに完成させるということだけで、企画内容がこれで良いのかどうか寺側にお伺いを立てる必要がない。
▼プロジェクト・リーダーたるには?
こうして、今回は中野さんという陶芸家に球形の焼き物約800個を作ってもらい、それをランダムに配置し、内、100数十個には電球を入れ込んだものが作られました。
この電球のどれを光らせその際には庭に当てるライトをどのようにするのかというパターン10数通りをコンピュータで制御、その照明パターンの変化によって、まるでマグマのような色のほのかな光が沸き出してくる表現が出来上がりました。
私が思うに、プロジェクトのリーダーたるには、北山さんのようなプロとしてのスキルを持ちつつ、哲学をも併せ持ち、それを情熱的に語っていくことで共感してもらえる人間であるべきかと考えます。
どうしても共感出来ない人間は、プロジェクトから外してしまい、哲学を同じくする者同士が組むことで試行錯誤する場合や、不確定要素の多い事柄に取組む際にも、ブレが少なくなります。
哲学を共有しているという意味では、いちいち指示を待つ必要がなくなるでしょうから、上司からの指示待ち人間という存在もなくなります。
また、企業側としてもそのような人間をプロジェクト・リーダーとして十分な権限と責任を持たせることが必要です。
いちいちお伺いや細かい報告をしなければならないということでは、リーダーが十分な力を発揮するための阻害要因となるかと思われます。阻害要因というか、そんなことをやらなければならない方なら、リーダー不適格というべきかもしれません。
もし企業としての元気力という表現がありうるとすれば、様々なプロジェクトについて「リーダーとして適任」といえる人材がどれだけいるのか、これも一つの指標となるようにも思えます。
以上、ちょっと変わったお寺の、ちょっと変わった庭師を事例にプロジェクト・マネジメントについて考えてきました。
この日本で唯一の過激なライトアップは、5月5日まで観ることが出来ます。
もしご興味をお持ちいただけたようでしたら、GWにでも現物をご覧になってみてはいかがでしょうか。
■プロフィール
咲本 勝巳(さきもと かつみ)
eビジネス、組織論、経営戦略、現代思想にとても高い関心を持つマーケティングのコンサル屋。
関西SOHOデジタルコンテンツ事業協同組合 理事
関西ベンチャー学会 理事
私についてご興味のある方は硝子張り公開→ http://www.sakimoto.biz/
(2003/04/30)









