パン屋さんのブランド構築(前編)
『ビジネスにマーケティング☆を走らせよう!』に掲載
http://www.mankai.biz/
「パン屋さんのブランド構築(前編)」
マーケティング・コンサルタント 咲本 勝巳
みなさん、こんにちは!咲本です。
今回は、あるパン屋さんのブランド構築についてのお話です。
ブランド構築については、とりわけ世界的に有名な大企業を事例に語られることが多いのですが、実はどんな小さな事業を行っていたとしても、事業を発展させていきたいのであれば、必ず真正面から取組むべきことなのです。
で、事例として大企業がではなくパン屋さんです(笑)
なぜなら、今や誰でも知っている大企業ではなく、まだそこまで至っていない小さな企業を事例にした方が、具体的な取組みが見えやすいという点や、大きな企業だけが考える雲の上の話だとの誤解が出ないからです。
まず、パン屋さんをご登場させる前に申しておきたいよくある誤解は、広告によってブランドが構築出来るとの幻想です。
この点については、小さな会社を事例とする場合には、事例として説明出来ないので、事前に申し上げておきましょう。
例えば、『ハリー・ポッターと賢者の石』の国内でのヒットは、従業員4名の弱小出版社によってなされたものであり、ヒットするに至るまでの広告宣伝費は、ゼロ円であったという事実。
一方、検索エンジン「エキサイト」が展開するブロードバンド・プロバイダー事業「BB excite」は、テレビ広告に多額の費用をかけることによって、受注を獲得し、ひいてはブランド化させようとしているように見受けられます。
果たして「ハリー・ポッター」のような効果を、広告によって獲得出来るのでしょうか?
おそらく、みなさんの率直なご感想が一致するのではないかと思うのですが、「BB excite」事業は、広告による費用対効果など全くないまま、失敗に終わってしまうことでしょう。
そのテレビCMは、ひょっとするとWebにおけるアニメーション画像並のギコチのないもので、その下部にとても小さな字幕を流し、まるで読んでもらわなくても構わないかのように作られています。
おそらく広告業界では、敢えてWeb的な画像によってインターネットを想起させ、読みにくい小さな字幕で、興味のあるユーザーに必死で読ませようと訴求するとかの、訳の分からない説明によって、煙にまくのでしょう。
これを称して、広告代理店さんは、「クリエイティブ」と称されます。
すなわち、伝えたいことをそのまま伝えているのでは、自分達の値打ちが薄れるから、「クリエイティブ」と称して、ひとひねりしてメッセージを伝わりにくくするのです。
ちなみに「BB excite」のキャッチコピーは、「先生、好奇心がうずいて眠れません」。
こんなCMに大金を使う気持ちを考えますと「好奇心がうずいて眠れません」(笑)
私は、マーケティングとは「お客さんに伝えたい価値を伝わるようにすること」と定義しています。
その定義をベースにすれば、広告代理店の基本は、「お客さんに伝えたい価値をそのまま伝えずに、クリエイティブという名の元に、ひとひねりすることによって、伝わりにくくすることが我々の仕事である」ということとなります。
このような広告に限って、依頼した企業側には、費用対効果が得にくいのにもかかわらず、広告賞を受賞したりしています。
広告マンは、依頼企業への効果よりも、広告関係の賞を受賞することの方に、より強い関心があります。
例外的に、それには該当しない優秀な広告マンもいらっしゃることでしょうが。
でも、一般的には世の中で高い評価をされているわけでもないのに、広告頼みの姿勢では、ブランド構築は無理であると認識して下さって構いません。
テレビCMを中心として展開出来るだけの予算を持つ企業は、それだけでも優位性があることは間違いありませんが、そんな企業でも、広告宣伝を誤解していれば痛い目に遭う可能性は高いのでしょう。
そりゃそうでしょ。
いくら、この商品は素晴らしいですよと広告しても、所詮は自画自賛なのでありそんなことをまともに信用してもらえると考える方が、頭がおかしいわけです。
食肉偽装事件を筆頭に、企業の騙しが横行する中、お金さえ出せば可能な広告の信頼性は激しく低下しています。
では、「ハリー・ポッター」は当初広告を使わずに、どのようにして高い評判を得ることに成功したのでしょうか?
それは、発売の1年以上前から徹底的に広報に力を入れて、最終的にはマスコミが大騒ぎしてくれるところにまで持っていったところにポイントがあります。
広告に大きな費用をかけ始めたのは、既にヒットしてから、その人気維持のために使っていたに過ぎません。
ヒットさせるための広告費はゼロ円です。
広告では信頼性を獲得出来ないのに対し、第3者の立場である多数のマスコミに取り上げてもらえるようになりますと、グンと信頼性と知名度がアップすることは間違いありません。
広告を使うよりも、まずは広報で信頼性と知名度を上げていくことに頭を使うべきであるとするならば、資本力に関係なく取組んでいけます。
ということで、普段私がおすすめしていますのは、広報の中長期計画と年間計画を立てていただき、ネタのない時期には、無理矢理にでもネタを発生させたり、同じような内容でも切り口を変えて広報するなど、広報を計画的・戦略的に行っていただくということです。
ある程度、新聞等に取り上げられるようになってきますと、それがまた実績になってきますので、次の段階として、テレビ番組や雑誌などを個別に媒体研究をし狙い撃ちをしていくことになります。
ここまでの成果が出せるようになってきますと、あともう一息でかなりの知名度というところにまでなっていることでしょう。
おっと、少し長くなってしまいました割には、まだパン屋さんのことを全く事例に出していなかったですね(笑)
今回ご紹介させていただいた「広報」をブランド構築のためにフル活用していただくといたしまして、次回改めてパン屋さんを事例に、ブランド構築の細かなポイントについて見ていきたいと思います。
(この調子だったら次回1回で書ききれないかも。。。)
■プロフィール
咲本 勝巳(さきもと かつみ)
eビジネス、組織論、経営戦略、創業、ベンチャー、現代思想にとても高い関心を持つマーケティングのコンサル屋。
大阪市立大学・大学院創造都市研究科アントレプレナーシップ研究分野「創業アドヴァイザー」
関西ベンチャー学会 理事
関西SOHOデジタルコンテンツ事業協同組合 理事
明日28日は親しくお付き合いさせていただいている石川県庁職員さんからの依頼で、能都町商工会まで講演に行きます。
お題は「マーケティング戦略と商品のブランド化」。まだ講演に使用するパワーポイントを作っていません(汗)
私についてご興味のある方は硝子張り公開→ http://www.sakimoto.biz/
(2003/08/27)









