2004/2/16 月曜日

マネジメント

Filed under: 経営戦略, 読書 — 咲本 @ 9:26:44

『日刊SOHOのツボ!』に掲載
http://www.soho-union.com/soho/

「SOHOによく効く書籍」(#003)
咲本@時計台ネット

【○】本日のお題「マネジメント」━━━

みなさん、こんにちは!咲本です。

前々回、『はじめの一歩を踏み出そう 成功する人たちの起業術』に、事業を立ち上げる人には「起業家」「マネジャー」「職人」という3つの人格を併せ持っており‥‥、というくだりがあることをご紹介しました。

そして前回には「起業家」的人格、とりわけ「アントレプレナーシップ」と呼ばれるものがどのようなものであるのかについて、書籍をご紹介いたしました。

さて、今回は「マネジャー」的人格に効く書籍をご紹介いたします。

マネジャーの仕事ヘンリー・ミンツバーグ『マネジャーの仕事』


マネジメントについて語る前に、それではマネジメントを行使するマネジャーとは一体どのような仕事をしているのであろうかということを把握しておくことが重要です。

本書でミンツバーグがそれを解明するまでは、マネジャーの職務について具体的な事柄が何も知られていないまま、マネジメントの議論がなされてきたのです。

マネジメントを語る経営学の大家も、マネジャーの仕事に無知または大きな誤解をしたまま、マネジメントを語っている場合が多いことが明らかになります。

例えば、経営者の仕事について説明される際によく使われる「POSDCORB」。
P:Planning(計画化)、O:Organizing(組織化)、S:Staffing(人員配置)、
D:Directing(指揮)、C:Coordinating(調整)、R:Reporting(報告)、
B:Budgeting(予算化)

これらの事柄についていくら説明されたとしても、マネジャーにとって何も役に立たず、せいぜいのところ、「われわれが無知である領域に名称をつけるのに役立」つ程度のものだったことがわかります

役に立たないことの事例として、次のような引用がなされています。

本社販売担当重役の何人かは、計画作成を各営業所の管理活動の一つとみなしている。しかし、計画作成という活動は、分析、技術、および人間関係スキル以上のものなのだろうか。また、マネジャーは、本当に腰を落ち着けて、セールスマンの育成・監督、製品の需要予測、営業所の運営などの個別問題を関知せずに「さて、これから計画づくりをしなければならない」などと定期的に公表するものであろうか。

本書ではマネジャー達の観察を多くの文献情報により補強し、
マネジャーの仕事にある6つの明確な特徴
マネジャーの仕事上の10の役割
などが明らかにされています。

様々なマネジメント書を読む前のはじめの1冊としてこの本を読まれることで、マネジャーとして取組む際に、机上の空論となるビジネス論を見分けることのできる眼差しを持つことに貢献してくれます。

マネジメント - 基本と原則  [エッセンシャル版]P・F. ドラッカー『マネジメント - 基本と原則 [エッセンシャル版]』


本書をひとことで言いますと、マネジメント論を代表する必読教科書となるものです。

世界中で長年にわたり絶賛され続けている本です。

明快であり、いつまでも記憶に残りやすい名言だらけです。

でも私は敢えて批判もしておきます。

それは、ドラッカーでさえ先程ご紹介した「POSDCORB」をベースに説明しているのです。

マネジャーが日々立ち向かう現実は、複雑で時間の余裕もなく、計画したことがすぐに変更せざるを得ないものであり、ドラッカーのように明確に語れる世界とはほど遠いがゆえに、ドラッカーのいうように実践できるというのは非現実的といえます。

つまりマネジメントを評論家として説明するには便利であるけれど、実際にマネジャーがそのまま「使える」というものではありません。

そういった前提で読まれませんと、単なる評論家としての知識にしかならないと私には思えます。

MBAコースでは教えない「創刊男」の仕事術くらた まなぶ『MBAコースでは教えない「創刊男」の仕事術』


前2作とは本の趣が全く違います。

著者はリクルートに20年勤務する中で14のメディアを創刊させた方で、彼のやってきた経験から、仕事に「使える」ものを目指して書かれたのが本書です。

人の会話を事例に出されている点が非常に多いです。

これはマネジャーの特徴として、文章にすることよりも、圧倒的に口頭で済ますことが多いことにもよるのでしょう。

「使える仕事術」というだけあって、ホントにそのように思える術がたくさん散りばめられています。

これを実用書として読むことが普通かと思うのですが、私の提案として、本書に書かれた指摘が、ミンツバーグとドラッカーの発言のどこを指して言っているのか、対比させて読んでいきますと、奥行きのあるマネジメントについての考え方が得られるのではないかと思います。

▽ 補足

マネジメントの教科書的なものとしましては、ジョアン・マグレッタ『なぜマネジメントなのか』も体系だててバランスよくまとめられた本だと思います。

なぜマネジメントなのか―全組織人に今必要な「マネジメント力」


これ以外にもマネジメントに関する本は、実にたくさん発行されています。

しかしながら、教科書的な本をいくら読みましても、実務としてのマネジメントに直接役立つとは言い難いわけです。

これらマネジメントの教科書的な本を読まれるのであれば、必ずミンツバーグの前掲書を先にお読みになってから、つまりはマネジャー像をしっかりと持たれ、その像に当てはまるように頭の中で再構成されて理解されるべきであると指摘しておきます。

次回は、「SOHOによく効くeビジネス書」についてお話する予定です。

【プロフィール】
咲本 勝巳(さきもと かつみ)
1965年京都生まれ。京都在住。eビジネス、組織論、創業、ベンチャー、経営戦略、現代思想にとても高い関心を持つマーケティングのコンサル屋。

関西ベンチャー学会 理事 http://www.kansai-venture.org/

大阪市立大学・大学院創造都市研究科アントレプレナーシップ研究分野「創業アドバイザー」 http://www.gscc.osaka-cu.ac.jp/

起業・マーケティングによく効くメルマガ「週刊☆ビジマ」発行人
http://www.mankai.biz/

今、オークト.comにハマっています。 http://www.orkut.com/
Googleのエンジニアが開発した出会い系サイトです(^^;
英文サイトなので最初はちょっと戸惑いますが、少し慣れてくれば、結構楽しめます。
登録されている方からのご招待がない限り、登録することができないという、いかにもクチコミ的に爆発しやすい仕組みとなっています。

登録したいとご希望の方は、私にメールを下さいね。
ご招待させていただきます。

私のことはWebでガラス張り公開中→ http://www.sakimoto.biz/
mailto:sakimoto@tokeidai.net
(ご意見・ご感想・ご提案お待ちいたしております)
(2004/02/16)

2004/2/13 金曜日

仏壇屋さんの’誠実’戦略

Filed under: 経営戦略 — 咲本 @ 23:00:55

『ビジネスにマーケティング☆を走らせよう!』に掲載
http://www.mankai.biz/

「仏壇屋さんの’誠実’戦略」
マーケティング・コンサルタント  咲本 勝巳

みなさん、こんにちは!咲本です。

今回はお仕事でお付き合いさせていただいている仏壇屋さんのことをお話させていただきます。
コラムでご紹介させていただいても良いとのパーミションを、快くいただきました。

▼ 仏壇屋さんの世界でも産地偽装が!

食品を中心に産地や賞味期限などの偽装事件が多発していますが、仏壇の業界でも、最近仏壇の産地を偽装する業者さんが増えています。

どういうことかと言いますと、良質の素材を使用し、京都の職人さんによる高い技術レベルによる独特の工法によって作られた仏壇は、「京仏具」と呼ばれ、値段も高いが品質も極上のものとして昔から評価されています。

ところが、お寺さんから見積提示を求められたアイミツの席で、とても京仏具としてあり得ない安値を提示し受注して、その結果、中国など他産地で粗悪品を製造したにもかかわらず、高級仏壇として納品するというアコギな仏壇業者が存在するらしいのです。

以前、『「非対称情報」のマネジメント』と題して書きましたモラルハザードの状態が起こっているわけです。
コラムはこちら→ http://www.crafting.jp/blog/unsymmetrical_information/

非対称情報であることをいいことに、産地偽装をして販売した結果、買い手側はどんなことになっているのでしょうか?

正規に「京仏具」と呼ばれるものでしたら、100年近く使用でき、古くなってきましてもいい「風合い」が出てきます。
あらかじめ木彫部分などもバラバラに分解できるようになっているため、修理もしやすく作られています。

一方、中国製仏壇の10年後の姿を画像で見せてもらったことがありますが、金箔がボロボロに剥がれてしまい、見るも無惨な状態になっていました。

通常、お寺さんの仏壇は、檀家さん達の寄付を集めてオーダーされるものですので、10年もすればボロボロになってしまう仏壇を目の当たりにして、お寺さんと檀家さんは、そうなってからどのように対処すればよいというのでしょうか?

少々割高でもホンマモノの「京仏具」を購入した方が、コストパフォーマンスがいいに決まってます。

家庭向けの仏壇を例に安売り業者のやり方をご紹介いたしますと、「京仏具」という名と似て非なる「京型」という名乗られた低品質の仏壇を、自店平常価格の70%とか80%引きの特価とみせかけて販売する方法が横行しています。

実はこのコラムを書いている2月12日の京都新聞朝刊折込広告の中に、ちょうどそのような仏壇屋だと思われる「お彼岸半額大会」なるイベント開催案内のチラシを見かけました。

あまりにも二重価格表示ミエミエでしたので、私は公正取引委員会近畿事務所に問い合わせをしまして、その結果チラシと状況説明書とを一消費者の立場で郵送することにしました(苦笑)

私のお付き合いさせていただいている仏壇の製造・販売をされている(株)小掘という会社があります。

(株)小掘は、ホンマモノの「京仏具」をお寺さんや一般のご家庭向けに提供され続けている会社です。

でも、非対称情報を悪用した業者と比べますと、どうしても価格は高くなってしまいます。

では、(株)小掘は、産地偽装をしてインチキ臭い安売りを行う悪徳業者ではなく、ホンマモノの「京仏具」を提供する企業であるという信頼性をどのようにして勝ち取ろうとされているのでしょうか?

▼ 「誠実」を情報発信

この会社を訪問していつも感じますのは、社内に「誠実」の空気がみなぎっていることです。

社長さんや専務さんにも、「なぜ?」と思えるほど謙虚で低姿勢な印象を抱きます。

これはなにも空気だけのことではなく、実際に「誠実」を基本戦略にされて実践に踏み切っていられます。

ちなみに、この「誠実」というコトバ自体は、私が勝手にそのように感じるから言っているだけでして、(株)小掘として常日頃から「ウチは誠実やねん!」と言われてるということではありません(笑)

でも、以下お読みいただければ、私のいう「誠実」の意味を少しはわかっていただけるのではないかと思います。

そこで、まずは(株)小掘のホームページを見てみましょう。
http://www.kobori.co.jp/

トップページ下部の方に並ぶ、社長、専務、ホームページ担当者、総合サービス係の顔写真、フルネーム、しかもそれぞれのメールアドレスまでが表示されています。

もし商売の姿勢に少しでも後ろめたさがあれば、ここまで「顔出し」することが果たしてできるでしょうか?(笑)
別に普通の企業でも、出来ない企業の方が圧倒的に多いかと思います。

また、これは「誠実」をモットーに情報発信しよう、お客様にはお店と同じようなおもてなしの心を持ってホームページでも接しようとの意識が高いからこそできることだと思います。

極めつけは、その上部にあるお寺さん向けの「製作工程報告サービス」です。

受注のあったお寺さんごとに専用ページを用意され、自社工房での各製造工程の状況を画像と職人さんのコメントによって、製造工程の過程を確認することができます。
サンプルページは↓
http://www.kobori.co.jp/k2003/s-houkoku/sample1/sanmple1/sanmple_kuden1.html
http://www.kobori.co.jp/k2003/s-houkoku/sample1/sanmple1/sanmple_kuden2.htm

最早ここまで実践されますと、産地偽装の余地はありません。

トップページの更に上の方を見ますと、京都本店内と仏具工房内に設置されたライブカメラを、誰もが見ることのできるコンテンツが用意されています。

これによって、例えば経営陣の方々が普段から工房のスタッフさん達に「決してお仏壇をまたいではいけない」と口を酸っぱくして言われていることが実践なされているかが、確認できるようになっています。
店員さんが鼻クソをほじったりしていないかも確認できます(笑)

「誠実」に仕事に取組んでいます!とページに書くことは、いとも簡単です。
しかし、それだけでは情報の真偽はわかりません。

不祥事を起こした企業サイトを見て回りましても、「当社は不誠実な企業だ」と正直に書かれることは決してありません(笑)

ここまでの情報発信ができるということは、スタッフ一同が「誠実」の実践をしているという自信がないとできないことだと思います。

そして、トップページ最上部あたりには、「冊子進呈」のボタンやリンクが散りばめられています。

高額商品を販売されている会社ですので、やはりまずは資料請求をしてもらい、資料によるある程度のご納得を得て、ご来店され、購入されるという流れが、ネットを販促に活用する場合には自然かと思います。

でも、高額商品の典型的なもの、例えば、リクルートのISIZE住宅情報のコンテンツを利用してみて、住宅メーカーのカタログを大量に請求してみますと、「ちょっと近くまで来ましたもので‥」なんてミエミエの口実のもと、たくさんの営業マンが飛び込みでセールスに来ます。←私は過去に実験済みです(笑)
http://www.isize.jutakujoho.jp/

(株)小掘は、「誠実」を実践したいがゆえに、そのようなぶしつけなセールスを一切行わないことを、「わたくしたちの約束」として明確に宣言されています。
http://www.kobori.co.jp/k2003/form/yakusoku.html

もし万が一、顧客対応について何か失礼があった場合には「お客様の声」という名の掲示板に、誰の目にもわかるように怒りの書き込みをすることもできます。
社長・専務や総合サービス係に直メールで抗議することだって可能です。

しかし、このような取組みをいくら行っていたとしましても、ホームページは訪問してもらいませんと、せっかくの誠実さもお客様に伝えることができません。

このあたり、検索エンジン最適化(SEO)対策にも取組んでおられ、検索エンジンGoogleで「仏壇」というキーワードで検索すれば、184,000件中5番目に表示されますので、多くの訪問者を得ることに成功されています。(2月12日現在)
http://www.google.co.jp/

更には、検索エンジンマーケティング(SEM)にも取組まれ、Googleアドワーズ広告という、ユーザー側の利便性本意に作られた、費用対効果の高い広告掲載を続けられており、既にサイト誘導に結び付けるための一定のノウハウを持つに至っておられます。

SEOとSEMが功を奏して、Webサイト来訪者大幅増加→資料請求件数大幅増加→請
求者からの購入件数大幅増加という好循環があっという間に生まれました。

ほかにもユニークなのは、「スタッフの悲鳴」というコンテンツがあり、ホームページ担当者は勿論のこと、様々な社員さんが個人日記を書き込まれていることです。
http://www.kobori.co.jp/cgi-bin/sunbbs1/index.html

企業Webには、制作業者さん任せにして小ぎれいにさえ作っておけば良いとの考えを持たれているケースがほとんどかと思われます。

しかし「スタッフの悲鳴」によって、ホームページ担当社員さん以外もホームページに参加されているわけで、こんなところからも口先だけではない社員さん達の包み隠さない「誠実」さを感じ取ることができます。

最近では、ネット上から直接仏壇を購入したい方向けに、ECサイトを立ち上げられました。
http://store.yahoo.co.jp/kobori/

なんと驚くことに、Yahoo!ショッピング全出店企業の中で、ケタ違いの最高価格を誇る5,000万円の仏壇も購入できるようになっています。
http://store.yahoo.co.jp/kobori/takumi.html

▼ 広報の積極的取組み

以上、多岐にわたってホームページ上での実践をご紹介してきましたが、勿論、ホームページ上ばかりで「誠実」を実践していらっしゃるわけではありません。

全て挙げ出しますと、膨大な量になってしまいますので、1点だけご紹介しておきましょう。

仏壇業界では、テレビや新聞の広告を使う例を多く見受けられますが、それに対して広報に力を入れることに力点が移ってこられています。

広報重視とは、「週刊☆ビジマ」コラム執筆者の植木さんと同じですよね。

なぜ広報を重要視するのかは、「誠実」が伝わりやすいのは、ウソ八百の自画自賛ができる広告重視の方法よりも、第三者の取材による客観性の高い記事などで取り上げられる広報の方であるからです。

広報を実践する上でのメリットは、植木さんの過去のコラムからいくらでもご理解いただけるでしょうから、ここでは省略いたします。
植木さんの過去コラム→ http://ueki.biz/

そのような広報を行っていくことにより、地元の京都新聞は勿論のこと、大手新聞にも頻繁に記事掲載されるようになっておられます。
http://www.kobori.co.jp/k2003/pressrelease/re-pressrelease.htm

現在は広報戦略やその他たくさん新たな展開が始まり出しています。
内容は、まだヒミツです(笑)

その他今までに実践されてこられた事柄は、上記URLのマスコミ掲載記事をご覧になれば、その一部を垣間見ることができます。

▼ 最後に

京都の伝統産業全体が不況産業といわれることが多く、市場の閉塞感を感じるからなのか、一部の業者が悪徳な商売さえ行っている状況にあります。

そんな中、(株)小掘の取組みを観察していけばいくほど、暗雲の時代に入ったかのように見えなくもない伝統産業の世界にも、未来に向けて伸びる一条の光が見えてくるように実感できるのです。

(株)小掘の姿から、ふと、ジム・コリンズの『ビジョナリー・カンパニー』の一節が脳裡に浮かびました。

最後にその一節をご紹介しておきましょう。

決定的な点は、理念の内容ではなく、理念をいかに深く「信じて」いるか、そして、会社の一挙一動に、いかに一貫して理念が実践され、息づき、現われているかだ。ビジョナリー・カンパニーは、「何を価値観とするべきか」と問いを立てることはない。「われわれが実際に、何よりも大切にしているものは何なのか」という問いを立てる。

ビジョナリー・カンパニーは、基本理念を信仰に近いほどの情熱を持って維持しており、基本理念は変えることがあるとしても、まれである。ビジョナリー・カンパニーの基本的価値観は揺るぎなく、時代の流れや流行に左右されることはない。‥‥ビジョナリー・カンパニーの基本的な目的、つまり、存在理由は、地平線の上で輝き続ける星のように、何世紀にもわたって、道しるべになることができる。しかし、ビジョナリー・カンパニーは、基本理念をしっかりと維持しながら、進歩への意欲がきわめて強いため、大切な基本理念を曲げることなく、変化し、適応できる。

■プロフィール
咲本 勝巳(さきもと かつみ)
eビジネス、組織論、経営戦略、創業、ベンチャー、現代思想にとても高い関心を持つマーケティングのコンサル屋。

大阪市立大学・大学院創造都市研究科アントレプレナーシップ研究分野「創業ア
ドバイザー」
関西ベンチャー学会 理事
関西SOHOデジタルコンテンツ事業協同組合 理事

今回のメルマガが記念すべき?第100号目となりました。
これからもコラム執筆者数が増える予定で、いよいよ「週刊☆ビジマ」から、「日刊☆ビジマ」と誌名を変える日も近い!?

私についてご興味のある方は硝子張り公開→ http://www.sakimoto.biz/

mailto:sakimoto@tokeidai.net
(2004/02/13)

2004/2/2 月曜日

アントレプレナーシップ

Filed under: 読書 — 咲本 @ 23:32:21

『日刊SOHOのツボ!』に掲載
http://www.soho-union.com/soho/

「SOHOによく効く書籍」(#002)
咲本@時計台ネット

【○】本日のお題「アントレプレナーシップ」━━━

みなさん、こんにちは!咲本です。

前回ご紹介した『はじめの一歩を踏み出そう 成功する人たちの起業術』に、事業を立ち上げる人には「起業家」「マネジャー」「職人」という3つの人格を併せ持っており‥‥、というくだりがあります。

「職人」的人格は、Flash制作が得意とか税理士であるとか、専門特化されたスキルのことを指します。

いくら「職人」的に優れていましても、あとの2つの人格も併せ持って、状況に応じてそれら3つの人格をうまく発揮することができませんと、SOHOとしてやっていくには不十分なのです。

そこで今回は「起業家」的人格、とりわけ「アントレプレナーシップ」と呼ばれるものがどのようなものであるのかについて、たいへん参考になる書籍をご紹介いたしましょう。

なお、次回には「マネジャー」的人格に効く書籍をご紹介する予定です。

ベンチャー創造の理論と戦略―起業機会探索から資金調達までの実践的方法論ジェフリー・A ティモンズ『ベンチャー創造の理論と戦略―起業機会探索から資金調達までの実践的方法論』


この書籍は、アントレプレナーシップはもとより、ベンチャー立ち上げに必要だと思われる知恵と実践法が網羅された、全651ページにも及ぶ枕としても使えそうな厚さの本です(笑)

今回のお題であるアントレプレナーシップについては、第1章・第5章を中心的に語られています。

とりわけ第5章で「アントレプレナー・マインドの六大テーマ」「その他の望ましいが会得困難なメンタリティと行動」「非アントレプレナー・マインドの考察」については、膨大な事例から得た情報をたいへんうまく整理されていることもあり、いわば定説と呼んでもよいものとなっています。

参考までに「アントレプレナー・マインドの六大テーマ」を挙げてみますと、

  • コミットメントと強固な決意
  • リーダーシップ
  • 起業機会への執念
  • リスク、曖昧性、不確実性に対する許容度
  • 創造性、自己依存、適応力
  • 一流たらんとする欲求

となります。

アントレプレナーシップがどのようなものかを明確に意識することによって、自分自身のどのような側面が評価でき、どんな点に注意を払う必要があるのかが把握できます。

新訳 イノベーションと起業家精神〈上〉その原理と方法P.F. ドラッカー『新訳 イノベーションと起業家精神〈上〉その原理と方法』


「新訳」イノベーションと起業家精神〈下〉その原理と方法P.F. ドラッカー『新訳 イノベーションと起業家精神〈下〉その原理と方法』


一方、本書ではアントレプレナーシップのマインドの問題を取り扱うのではなく、実務と捉えて、その側面を浮き彫りにしています。

起業家精神は、科学でもなければ技でもない。実務である。もちろん知識は不可欠である。本書はそれらの知識を体系的に提示する。

ここでドラッカーの主張する起業家精神を発揮する4つの条件をご紹介しておきましょう。

  1. イノベーションを受け入れ、変化を脅威ではなく機会とみなす組織をつくりあげる必要がある。起業家としての厳しい仕事を遂行できる組織をつくる必要がある。起業家的な環境を整えるための経営政策と具体的な方策のいくつかを実践する必要がある。
  2. イノベーションを組織に組み込むとともに、イノベーションの成果を体系的に測定する必要がある。あるいは、少なくとも評価する必要がある。
  3. 組織、人事、報酬について、特別の措置を講じる必要がある。
  4. いくつかのタブーを理解する必要がある。行ってはならないことを知る必要がある。

ご覧いただいてお気づきの方も多いかと思いますが、ドラッカーの主張するアントレプレナーシップは、新規に事業を立ち上げるために必要なものというよりもあらゆる組織に所属する人すべてが学び・経験し、発揮すべき実務というところにまで落とし込まれています。

このような観点から世の中の組織を見渡してみると、SOHOのような小規模組織こそ、アントレプレナーシップが乏しいということにもなりかねません。

ドラッカーも下記のように言っています。

規模の大きさそのものは、イノベーションや起業家精神の障害にはならない。
たしかに、よく問題にされる大組織の官僚的体質や保守的体質は、イノベーションや起業家精神にとって深刻な障害となる。しかし、それは中小の組織においても同じである。
企業であれ、社会的機関であれ、最も起業家精神に乏しく、最もイノベーションの体質に欠けているのは、むしろごく小さな組織である。

我々にとって、ファイト一発!的なマインド以上に決定的に必要なのは、ドラッカーの指摘する実務レベルでのアントレプレナーシップを持ったマネジメントであるのかもしれませんね。

不確実性のマネジメント―危機を事前に防ぐマインドとシステムを構築するカール・E. ワイク , キャスリーン・M. サトクリフ 『不確実性のマネジメント―危機を事前に防ぐマインドとシステムを構築する』


本書は、原子力航空母艦、航空管制システム、人質解放交渉、救急医療センター等々、ハイリスクな環境に身を置く組織に共通して見られる、不測の事態に直面してどのように適切にマネジメントしているのかを明らかにしたものです。

これだけ変化のスピードが速く、不測の事態が起こりやすい時代となってきますと、ワイクのいう「高いマインド」を持ち続けることが必要となると思います。

そのマインドを高めるためには5つのプロセスがあると導き出されています。

その5つのプロセスとは、
不測の事態を予測するためのマインドとして

  • 「失敗から学ぶ」
  • 「単純化を許さない」
  • 「オペレーションを重視する」

不測の事態を抑制するマインドとして

  • 「復旧能力を高める」
  • 「専門知識を尊重する」

という点で、それぞれについて事例を交え、詳しく説明がなされています。

私の見解としてはティモンズの「アントレプレナー・マインドの六大テーマ」だけでは、これだけ変化のスピードの速い時代には少し弱い点があり、ワイクの主張する「マインドを高める五つのプロセス」を加えたものが、21世紀型ともいうべきアントレプレナー・マインドだと、提案させていただきたいのです。

そういった意味で、一見アントレプレナーシップとは関係のないかのように見える本書も、必読のお薦め書とさせていただきます。

▽ まとめ

今回は起業家的人格、次回はマネジャー的人格と便宜上テーマを分けましたが、実際にはこれら2つを分けてしまうことには無理があります。

どちらの人格も有機的に絡まっているからです。

ですので、ティモンズも第6章で「起業家的マネジャー」についてページを割いており、ドラッカーの場合には、一貫して起業家精神を持ったマネジメント自体について語られています。

従って、コラムのお題がアントレプレナーシップとはしましたが、今回ご紹介した本を読むことによって、マネジャー的側面についても勉強になります。

【プロフィール】
咲本 勝巳(さきもと かつみ)
1965年京都生まれ。京都在住。eビジネス、組織論、創業、ベンチャー、経営戦略、現代思想にとても高い関心を持つマーケティングのコンサル屋。

関西ベンチャー学会 理事 http://www.kansai-venture.org/
大阪市立大学・大学院創造都市研究科アントレプレナーシップ研究分野「創業アドバイザー」 http://www.gscc.osaka-cu.ac.jp/

1月25日付近にGoogleの検索結果順位が大幅変動するという、俗にいうところの「Florida Update」なる現象が起こりました。

今までSEO対策を行っていたWebサイトが大幅に順位を下げてしまうことも多々あったようで、何が起こったのだ!大騒ぎされている方も多いかと思います。

たまたま私の某お客様は、185,000件中35位だったのが、今回4位にまで急上昇されましたので、ホッとしているところです。

米国では12月末にも順位の大変動があったらしく、このようなことが今後も起こるのだとすれば、SEO業者さんはどのような対応をされていかれるのか、状況を観察しているところです(^^;

私のことはWebでガラス張り公開中→ http://www.sakimoto.biz/
mailto:sakimoto@tokeidai.net
(ご意見・ご感想・ご提案お待ちいたしております)
(2004/02/02)

Creative Commons Licenseこの作品は、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下でライセンスされています。
Get FirefoxIE等のレンダリングバグには対応していません。W3C標準仕様準拠のブラウザでご覧ください。