ブレイクスルー思考
『日刊SOHOのツボ!』に掲載
http://www.soho-union.com/soho/
「SOHOによく効く書籍」(#006)
咲本@時計台ネット
【○】本日のお題「ブレイクスルー思考」━━━
みなさん、こんにちは!咲本です。
SOHO事業者として活動されている方の多くは、新しい企画を考えたりするような創造性の要求されるお仕事をされているのかと思います。
今回はビジネスにおいて創造性やイノベーションを生む思考法によく効く書籍をご紹介させていただきます。
アネット・モーサー・ウェルマン『仕事の壁を破る! ブレイクスルー思考術』
本書は古今東西の天才と呼ばれる人達から5つのスキルを見出しています。
それらは「先見者」「観察者」「錬金術師」「愚者」「賢者」と名付けられています。
そしてこれらは世の天才と呼ばれる人物だけが持っているものではなく、誰でも多かれ少なかれ持っているものだとされています。
それら5つのスキルのうち、自分自身がより強く持つ側面2つを高め、最も弱い側面を次の成長の機会にするべく、それぞれの側面についてのスキルアップ法や注意点が具体的に記述されています。
以前ご紹介しましたピーター・ドラッカー『マネジメント』などを読みますと、イノベーションの重要性が非常によくわかりますが、ではそれを生み出すことのできるアイデアを続々と発生させる具体的なスキルについては何もわかりません。
著者は言います。
ほとんどの企業は「戦略」という言葉を使いすぎなのだ。あまりにも使いすぎるので、ほとんど意味がなくなっている。実際ビジネス・アーティストは「戦略」という言葉を使うのを止めており、ただ「アイデア」と言うようになっている。
ビジネス・ルネサンスの時代、偉業は一見意味のないことから成し遂げられることが多く、賢明な「戦略」に基づいているとは思えない。それらはただ素晴らしいアイデアである。(中略)戦略の展開に焦点を当てる代わりに、アイデアの展開に焦点を当ててほしい。
つまりは、これからはマネジメント・スキルを高めていくのには、従来言われている方向性よりも、ブレイクスルー思考術をベースにしたスキルを高めていく方が、より重要性を帯び始めているのではないかと思うのです。
本書は創造的思考を組織として発揮するための有名な手法が明かされたものです。
著者はこれを「6つの帽子思考法」(Six Thinking Hats)と名付けられ、今や米IBM、マイクロソフト、NTT、デュポンなど多くの企業で採用されています。
この手法をごくごく簡単に説明いたしますと、6つの帽子とは、6つの視点を意味することで、
- 白い帽子:客観的な事実と数値(データ)からの視点
- 赤い帽子:感情的な視点
- 黒い帽子:警戒と注意を促し、考え方の弱点を指摘する視点
- 黄色い帽子:希望と肯定的な視点
- 緑の帽子:創造性と新しい考えからの視点
- 青い帽子:各視点を調整し、考え方のプロセスを構成したり、他の帽子の使い方を統制する視点
ということになります。
会議の中で「黒の帽子は脱ぎましょうよ」とか「黄色い帽子ではこのようにも思いますよ。」などの発言が飛び交うことになります。
この手法の良い点は、何日もの時間を要していた会議がスムーズな進行に変わっていくことと、建設的な考えや創造的な考えがたいへん多く出るようになることです。
クライアント先の会議で揉めに揉めて、なかなか話が前に進まないような場合には、この手法を導入することで、大きな改善がなされる可能性が高いです。
苅谷 剛彦『知的複眼思考法―誰でも持っている創造力のスイッチ』
暗記物ばかりで正解がひとつしかない受験戦争を経て、大学に入学後もその陥穽を補うような経験をしてこなかった方の中には、ブレイクスルー思考が苦手な方が多いのだろうと予想します。
本書は、世の中では正解がひとつであるとは限らない現実に対峙する大学生が、いかなる思考法を鍛えていけば創造的な思考ができるのかという視点から書かれたものです。
著者は全国3万人の大学生からベストティーチャーとして選ばれた東京大学教授。
さすがに説得力があります。
創造的思考スキルが一朝一夕に得られるようなものではなく、あくまでも日々の積み重ねによって得るものだとすれば、特段、ビジネスに特化して書かれた書物ではない本書が、大いに役立つものであることもおわかりいただけるかと思います。
15年ほど前に、私は近代心理小説で有名なフロベールが作成した『紋切り型辞典』という本を読んだことがあります。
要は、物事を当時の常識・先入観に染まりきった一般人の立場で定義されているという皮肉と風刺を狙った辞書です。
例えば、今風に言いますと、「CRM実現のためのベストプラクティス」とかの表現を発見して、文豪フロベールが辞書でいち早く採用して皮肉ろうという感じのものです(笑)
今や、「CRM」とか「ベストプラクティス」とか言われましても、それは過激に言えば、正解が一つだと決まっている受験の世界で、重要な言葉だと暗記したことを「一つの正解」に向けて回答する思考回路しかもっていないのではないかと疑ってしまいます。
そのような受験時の癖から抜けられない人には、是非読んでもらいたい書です。
ちなみにではありますが、ビジネス書として創造力開発の書籍を儲けだけのために書こうとする著者の大元のネタとして使われている可能性が高いのが本書です。
どれとは書きませんが、そのようなビジネス書に騙されないようにしましょう(笑)
【プロフィール】
咲本 勝巳(さきもと かつみ)
1965年京都生まれ。京都在住。eビジネス、組織論、創業、ベンチャー、経営戦略、現代思想にとても高い関心を持つマーケティングのコンサル屋。
関西ベンチャー学会 理事 http://www.kansai-venture.org/
大阪市立大学・大学院創造都市研究科アントレプレナーシップ研究分野「創業アドバイザー」 http://www.gscc.osaka-cu.ac.jp/
起業・マーケティング・eビジネスによく効くメルマガ「週刊☆ビジマ」発行人
http://www.mankai.biz/
今回、オススメ書として取り上げなかったものとして下記のものがあります。
ネッド・ハーマン『ハーマンモデル 個人と組織の価値創造力開発』

理由→まだ、一部しか読めていないことと、ノーベル賞に輝いた大脳生理学の最前線から、個人、組織、ユーザーなどにおけるビジネスに必要なあらゆることを、全てにわたって、ここまで解明できるものなのか、すごい可能性を秘めつつ、全面的に有効なのか、まだ日和見状態。
ハーマン氏は、右脳・左脳二元論のような単純な理論展開をしているわけではなく、少なくとも四元における関係性を問題にしているわけで、とても複雑な議論となるのです。
尊敬する知り合いの某M氏に教えてもらいました。
ちなみに、今売れっ子となっている脳の解剖学者である養老孟司氏の発言も、15年以上前に出された『唯脳論』以降、個別の話は別として全体としては、脳一元論で突破しようとする割には、認識論での視覚問題や身体論における幻肢問題など、重要問題の数々には一切答えないままであり、私は不信感を持ったままでいます。
私のことはWebでガラス張り公開中→ http://www.sakimoto.biz/
mailto:sakimoto@tokeidai.net
(ご意見・ご感想・ご提案お待ちいたしております)
(2004/03/29)





















