起業家像
『日刊SOHOのツボ!』に掲載
http://www.soho-union.com/soho/
「SOHOによく効く書籍」(#008)
咲本@時計台ネット
【○】本日のお題「起業家像」━━━
みなさん、こんにちは!咲本です。
今回はSOHOも起業家のひとつの形態であるという意味で、成功された起業家像に見られる共通点を探ることというのが、たいへん参考になるのではないかと思いまして、「起業家像」に焦点を当ててみました。
木村 剛『戦略経営の発想法 ビジネスモデルは信用するな』
2004年3月に発行されたばかりの新刊です。
みなさんの中で、金融政策のエコノミストが、なぜ、このような書名の本を著したのだろうか?
なぜ、戦略経営と名の付く書籍を「起業家像」とのテーマで私が紹介するのだろ
う?
との疑問を持たれる方がいらっしゃるかもしれません。
実は、本書での木村剛氏の立場は、新興コンサルタント会社の創業経営者の立場として書かれたものなのです。
また、起業家像としては、ご自身の体験してきたことは勿論のこと、ダイヤモンド社編集部の協力を得て、以下のような日本を代表する経営者へのインタビューをまとめあげて作られたものだからです。
京セラの稲盛和夫名誉会長、キッコーマンの茂木友三郎社長、オリックスの宮内義彦会長、信越化学工業の金川千尋社長、森ビルの森稔社長、HISの澤田秀雄社長、ドン・キホーテの安田隆夫社長、ワタミフードサービスの渡邉美樹社長、ローソンの新浪剛史社長、楽天の三木谷浩史会長。
木村氏は、このような経営者達に共通する「戦略経営の発想法」を、経営学者のピーター・ドラッカーの著作の中から、9つの法則を抽出し、それに当てはめて語られています。
9つの法則に加えて、唯一木村氏の主張する法則というのがあり、それは「ビジネスモデルは後知恵である」というものです。
それは『ベンチャービジネスが成功する本質が、「ビジネスモデル」にあると勘違いしたら、すぐに破綻してしまう』ということで、『「ビジネスモデル」は確かに経営の役に立つ』ものではあるが、『真の意味で、「ビジネスを成功させる決め手」にはなり得ない」ものでもあります。
というのは、これらはすべて「技術」あるいは「テクニック」の話である。そして、「技術」にすぎない話なのである。これらの「技術」が「経営」そのものだということはないし、ましてや「経営」を代替できるものでは決してあり得ない。
ビジネスモデルをこのように位置付けられているくらいなので、第2章に代表的な経営戦略論の紹介、例えばマイケル・ポーターの「5フォース」やマーケティングの「4P」、「SWOT分析」などのごく簡単な紹介が出てきます。
しかし、その直後に『本書において、いわゆる経営学的な「経営戦略論」をこれ以上展開するつもりはないからだ。あるいは、コンサルタントたちが商売を宣伝するために書くノウハウの一部開陳などということをするつもりもない。というのも、本書の狙いは、「ビジネスモデルで商売はできない」ということを証明することにあるからである』と話をひっくり返されます。
このことは、靴下屋チェーン店「ダン」の越智直正社長の発言を引用されて次のようにも批判されています。
背番号3を背負って、長嶋と同じバットを握ったら、どんな野球選手でも長嶋並みのホームランを打てまっか?あの人ら(大学の先生や商工会議所の偉い方)はそんな研究ばっかりしよりまんねんや。隣の奥さんが料理上手やと聞いたら、オクサン、どんなナベカマ使とりますねやと聞きに行くタイプよ。くだらん英語ようけ使うて。
私自身はコンサルタントでメシを喰っている人間ですが、何年も前から木村氏や越智社長と同様の立場を取ってきましたので、「うまいこと言うなあ」と思わず感心してしまいました。
改めて、木村氏の書籍発行の3年前にはイロイロと発表していたコラムについての感想・批判をいただきたいと思います。
http://www.crafting.jp/blog/4p/
http://www.crafting.jp/blog/swot/
http://www.crafting.jp/blog/strategy_building/
そして、その後の展開は、経営者達から得た発言を木村氏流に編集し直したものが300ページ以上続くのです。
ドラッカーから得た教訓と、経営者達の生の声とが見事に結び付き、非常に説得力をもって展開されています。
ちなみに、随所にテレビに登場するような「机上の空論エコノミスト」批判が散りばめられています。
その連中と同類と思われるのも迷惑だ・・・
という意識が強いようで、「机上の空論エコノミスト」をやり込めようとされる議論が随所で行われています。
気持ちはわからなくはないのですが。。。
私も、以前書いたコラムを読んだ「匿名」読者から、たくさんの批判メールが舞い込み、議論はしても、結局不毛に終わってしまいましたので。
でも、やはり挑戦的な書であることは間違いなく、そのような攻めに出た木村氏を、私は評価する。
『斎藤貴男 起業家に会いにゆく』
本書も起業家24人の取材をベースに起業家像をまとめられたものです。
先程の木村氏の著作にも紹介されていますダンの越智社長や楽天の三木谷会長も取材されています。
第1章から第5章までテーマをあげてまとめられていますので、起業家像への注目点が明確になっており、たいへんわかりやすいです。
この2冊を併せ読むことで、成功する起業家に共通するポイントが、浮き彫りとなってくるかと思います。
松田 公太『すべては一杯のコーヒーから』
前2著とは違い、本書はタリーズコーヒーの松田社長自らが著わした上場に至るまでの起業体験本です。
三和銀行の銀行マンであった松田氏が、シアトルで出会ったスペシャルティコーヒーに感動し、何のアテもなく銀行を辞め、苦労の末アポなしでタリーズコーヒー創業者のトム・オキーフへの直談判を実現させ、7000万円の借金で銀座に第1号店を開店などなどと説明しますと、あまり面白くも何ともないのですが(笑)、
何から何まで手に汗握る綱渡りの連続を重ねての起業体験であったことが、迫力をもって伝わってきます。
創業後3年2ヶ月というスピードでスターバックスより早く株式公開したことばかりに目が行きがちですが、金ナシ、コネナシ、商品知識ナシの松田氏が、なぜ、起業できて、しかもうまくいったのか、各章の冒頭にあるメッセージをかみ締めながら考えていただきたいと思います。
【プロフィール】
咲本 勝巳(さきもと かつみ)
1965年京都生まれ。京都在住。eビジネス、組織論、創業、ベンチャー、経営戦略、現代思想にとても高い関心を持つマーケティングのコンサル屋。
関西ベンチャー学会 理事 http://www.kansai-venture.org/
大阪市立大学・大学院創造都市研究科アントレプレナーシップ研究分野「創業アドバイザー」 http://www.gscc.osaka-cu.ac.jp/
起業・マーケティング・eビジネスによく効くメルマガ「週刊☆ビジマ」発行人
http://www.mankai.biz/
余談になりますが、起業家像に焦点を当てた本で一風変わった本があります。
山口 昌男『経営者の精神史 近代日本を築いた破天荒な実業家たち』
文化人類学者の著者が、幕末・明治・大正の実業家を掘り起こしたものです。
びっくりしましたのは、伊庭想太郎という人物で、肩書きとしては、東京農学校校長、日本貯蓄銀行頭取、江戸川製紙場長生社社長、文学社学園会会長、四谷銀行相談役という、すごい人物です。
ところが、大臣経験もある人物が収賄を行った可能性が高いことを聞きつけた伊庭は、「江戸主義の美学に反する人物」だと結論付けて、なんと、テロ行為で殺害してしまったのです。
裁判の結果、終身刑。
なんとも日本近代には、型破りというかユニークというか、そんな起業家像が多いことに驚かされます。
そういったところを痛感させるという意味では、日本の近代というのは西洋の猿真似をしていったということに、歴史上は認識されていました。
ところが、山口氏の書籍を見渡しますと、その複数の登場人物によって、西洋風複式簿記を企業に導入したりする、まさに猿真似をする起業家像が見受けられるわけですが、一方では、そんな先進的起業家成功事例たる人物が、テロを行ったり、茶人であったり、喜劇作家であったりするのです。
財閥経営者かつ喜劇作家というのは、現在はおそらくあり得ないはずです。
そんな「あり得ない」経営者達が、当時の産業界の中枢にはウヨウヨいました。
そんな事実を気付かせてくれるのが、この本です。
基本的な近代的ビジネス思想は、猿真似的に導入したけれど、人物像まで追及すれば、西洋とは明らかに違ったのが、明治・大正の日本近代だったということが浮き彫りになってきます。
それと比べて、現在の日本はどうなのでしょうか?
明らかにアメリカから学ぼうという風潮が強すぎなくはないでしょうか?
日本人の潜在性を過小評価し過ぎていないでしょうか?
猿真似と位置づけされている、明治・大正時代の起業家以上には、日本としてのオリジナリティを確立したいと、私は考えます。
私のことはWebでガラス張り公開中→ http://www.sakimoto.biz/
mailto:sakimoto@tokeidai.net
(ご意見・ご感想・ご提案お待ちいたしております)
(2004/04/26)














