2004/9/26 日曜日

組織における意味形成

Filed under: 読書 — 咲本 @ 0:38:39

『日刊SOHOのツボ!』に掲載
http://www.soho-union.com/soho/

「続・SOHOによく効く書籍」(#005)
咲本@時計台ネット

【○】本日のお題「組織における意味形成」━━━

こんにちは!咲本です。

前回のコラムでは意味形成における重要なポイントとなるメタファーについての書籍をご紹介いたしました。

さて今回は、組織における意味形成過程についての研究書をご紹介させていただきます。

カール・E. ワイク『センスメーキング・イン・オーガニゼーションズ』

本書は、ポスト・モダンマネジメント論のい旗手といわれる著書によるもので、組織論だけではなく、現象学などの理論も駆使されながら展開されてるものですので、少々難解です。

が、センスメーキングについて、これだけ体系立てて書かれた書籍は他には見受けられません。

さて、センスメーキングとはいかなることなのでしょうか?

このことを説明するには、本書で手を変え品を変えて、多角的に語られ続けていますので、一言では難しいのですが、私が個人的に引き付けられた説明を1箇所引用させていただきます。

センスメーキングは、

この変わりゆく世界が決して無意味にならないように類似や統一といった精神の力を持続しつつ、世界の多様性や変異性をいかに受け入れるかという課題にかかわっている。・・・現代的であるということは、新しいもののために過去を犠牲にするという問題ではなく、われわれが創り出した価値を維持し、比較し、忘れないという問題で、そうすることによって現代の価値を失わずに過去の価値を現代的にするのである。(p.226-227)

また、前回のコラムでメタファーについて取り上げられましたが、メタファーとセンスメーキングとは別物であると言われてます。
この点注意を要します。

組織の生の大部分をテクストの読みというメタファーで捉えることができるとの議論は、その生にかかわる多くのものを無視することになる。・・・テクストと言語ゲームは解釈のメタファーであるとしても、センスメーキングはメタファーではない。センスメーキングはまさに言葉そのもの、つまり何かを意味あるものにするということである。(p.26-27)

では実際にSOHO的組織におけるセンスメーキングはどのようになっているでしょうか?

できるだけ簡潔に申しますと、組織には「合理的システムとしての組織」、「自然的システムとしての組織」、「オープン・システムとしての組織」という3つの形態がありまして、SOHO的組織はほとんどの場合、オープン・システムとしての組織形態となっていることが多いはずです。

オープン・システムとしての組織の特徴は、

環境からのインプットに対するオープン性が高まれば、それだけ組織は多様な情報を取り扱っているという事実、そしてシステムの構造がルースであれば、それだけセンスメーキングを行う主体自身が捉えがたくなるという事実である。・・・すなわち、何が”外在”し、また何が”内在”しているか、そしてその両方の問題に答えるためにはわれわれは何者でなければならないか、といった問題である。まさにこのセンスメーキングのパースペクティヴと結びついたオープン性こそが、外在するものと内在するものとの区分を発見ではなく発明としてし、人が自らの制約を創り出すとし、何が妥当なインプットやスループットとなりえたかを回顧的に定義するきっかけとしてアウトプットを捉えるというおもしろい連鎖を発想させてくれるのである。(p.95-96)

う~む。
ちょっと難しい表現のように思われるかもしれませんが、上記のうち「主体について」や「発見と発明の違い」、「回顧的であること」など、個別のテーマについて詳しく扱った項目がありますので、あとは本書を読んでご理解下さいというしかありません。

ここまでのご説明で本書がたいへん思弁的な議論が展開されていくものである点については、ご理解いただけたのではないかと思います。

これは、本書のテーマ自体、言語化するのがたいへん難しいことを取り扱っていることから、ある程度止むを得ません。

しかしながら、ただ単に思弁的であるだけの書ではなく、思弁的展開の後、センスメーキングの実践や心構えについても書かれています。

「私は実践や心構えだけわかったら、それでエエねん!」という方がいらっしゃるかもしれませんが、その前提となる理論編に大半が使われていることには理由があります。

それは、

人びとが混乱に陥ったときに無意識にやっていることについて読者を前もって意識させたという意味で、本書全体が実践のための訓練になっていた、と。私は、人びとがこれまでほとんど意識せずにやってきたことについて自覚的になればなるほど、本書の記述の巧妙な点や豊かさに気づかれるだろう、と考えている。・・・たとえ、これまでの章が組織について高い知識を持つ研究者のために書かれていたとしても、組織での経験を積んだ人に注意深く読んでいただければ、これまで意思決定という人目を引く仕掛けの裏に隠されてきた組織の生の特性についていっそう自覚が高まるだろう(p.240-241)

ということなのです。

【プロフィール】
咲本 勝巳(さきもと かつみ)
1965年京都生まれ。京都在住。eビジネス、組織論、創業、ベンチャー、経営戦略、現代思想にとても高い関心を持つマーケティングのコンサル屋。

関西ベンチャー学会 理事 http://www.kansai-venture.org/

大阪市立大学・大学院創造都市研究科アントレプレナーシップ研究分野
「創業アドバイザー」 http://www.gscc.osaka-cu.ac.jp/

起業・マーケティング・eビジネスによく効くメルマガ「週刊☆ビジマ」発行人
http://www.mankai.biz/

【あとがき】

まずは私のかかわっているイベントをひとつご紹介いたします。

9月13日(月)18:30~「関西ベンチャー学会9月例会」

場所:Mebic扇町会議室A・B・C

テーマ:関西ベンチャー学会編「ベンチャーハンドブック」刊行決定に基づき
『ベンチャー経営者の条件』~ミッション・パッション・ビジョン

司 会:宮田由紀夫 氏(大阪府立大学経済学部教授・本会理事)
パネリスト:坂本充氏(株式会社マネジメントエフ代表取締役社長・本会会員)
釣島 平三郎 氏(大成学院大学教授・本会会員)
咲本 勝巳 氏 (時計台ネット代表・本会理事)

詳細・お申込は↓
http://www.kansai-venture.org/07_event/reikai-Sep.%2004.htm

9月4日(土)は「好きなことでメシを食う」と題したイベントが京都で大々的に開催され、約160名ほどの参加者が集まり、たいへん活気のあるイベントとなりました。
基調講演はカンデジ前理事長の吉田さん、私も個別相談員としてお手伝いさせていただきました。
二次会でも活気はおさまらず、京都でこんなに活気のあるイベントは初体験でした。

私のことはWebでガラス張り公開中→ http://www.sakimoto.biz/
mailto:sakimoto@tokeidai.net
(ご意見・ご感想・ご提案お待ちいたしております)
(2004/09/06)

2004/9/20 月曜日

脳科学によるマーケティングアプローチ

Filed under: 読書 — 咲本 @ 14:57:47

『日刊SOHOのツボ!』に掲載
http://www.soho-union.com/soho/

「続・SOHOによく効く書籍」(#006)
咲本@時計台ネット

【○】本日のお題「脳科学によるマーケティングアプローチ」━━━

こんにちは!咲本です。

さて突然ではありますが、魅力的な商品とはどういったものなのでしょうか?

それは、おいしい、美しい、心地よい、気持ちよい・・・

多くの人間の五感に共通して強く訴えかけてくるのが、消費につながる魅力的商品であるといえるのではないでしょうか。

これらは「情緒的価値」と呼ばれるもので、今まで主としてマーケティング論で取り上げられてきた「便利、カラダによい、ハイスペックである・・・」といった機能的価値とは違うものです。

では、情緒的価値がなぜ発生するのかを解明し、マーケティングに活用していくことは可能なのでしょうか?

今回ご紹介する本は、そのような点に取組んだ力作です。

ヒトはなぜその商品を選ぶのか?―脳とクオリアから解き明かす平林 千春『ヒトはなぜその商品を選ぶのか?―脳とクオリアから解き明かす』


本書は、マーケティングに脳科学とアフォーダンス理論を持ち込み、情緒的価値を解明したものです。

著者の使用する言葉に従いますと、情緒的価値にあたるものを「クオリア」と呼ばれます。

クオリアとは、もともとラテン語で私たちが心の内で感じる「感覚の質」を指し脳科学で使われている専門用語です。

このクオリアは2つに分類され、ひとつは、例えばバラを見て「赤っぽい」と感じる「感覚的クオリア」と呼ばれるもの、もうひとつはバラを見て「鮮やか、美しい」と感じる「志向的クオリア」と呼ばれるものです。

この「感覚的クオリア」と「志向的クオリア」とでは、使っている脳の部位が違うという多重な構造から、それらが織り交ざり、様々な印象を抱くように脳の構造ができています。

そして商品が売れるということは、人々の中で「共通のクオリアを感じ」てもらうことが前提として必要です。

その感じた内容によって「食べてみたい、身につけてみたい、使ってみたい」との行為に結びつき、結果的に購買されるということになります。

共通のクオリアから共通の行為に直結することを説明するのが、生態心理学を確立したジェームズ・ギブソンのアフォーダンス理論となります。

アフォーダンス理論がどのようなものなのかにつきましては、過去にコラムを書いたことがありますのでそちらをご参照下さい。
http://www.crafting.jp/blog/affordance2/

そういった理論的背景をベースにしながら第2章では「味とおいしさをヒトはどう感じるのか」「きれいな映像、いい音とは何か」「心地よさの実体を探る」「ヒトは新しさをどう感じるのか」等々五感と呼ばれるものについて、脳科学の知見を引用しながら解明されていきます。

そして第3章では「クオリア」をベースにした商品開発について明らかにされます。

日本実業出版社という比較的わかりやすい実用書を量産される出版社にありながら、脳科学とアフォーダンス理論を結びつけ、マーケティングに応用するというかなり冒険的かつ大胆な展開に挑んだ本書は、理論的にじっくりと検証しなおす必要があるとはいえ、たいへん刺激的なものであります。

著者の立場は、マーケティングの4P、すなわち、Product、Price、Place、Promotionに、「People」の視点を導入し、「人間にとって消費する意味と消費行動のあり方」について、科学的に解明しようというものです。

その「People」も、社会・文化的あるいは精神的存在たる「People」だけではなくて、生物学的「People」の視点を大いに取り入れようとされるのが特徴です。

私も人間のことをビジネスで考える視点として、文科系の話ばかりが蔓延していることに疑問を持っており、体感的には70%くらいを理科系、すなわち生物学的な人間の視点から取組もうとされる著者の姿勢には賛同するところです。
それほど、脳科学の分野は急速に発展してきています。

それにしましても、著者は民間の実務畑の方なのですが、よくぞここまで大胆な理論と実践を織り交ぜた書を著わしたものだとの驚きを隠せません。

本当はみなさんにご紹介せずに秘密にしておきたかった最近読んだ書籍の中では最も刺激を受けた書籍です。

マーケティングの書籍でよく見受けられる、ロジカルシンキングだけのもの、あるいはその対極として最近登場しつつあるクリエイティブシンキングが大半を占めているもの、いずれにも違和感を覚えてしまう私のような方がいらっしゃれば是非、ご一読のほどを。

【プロフィール】
咲本 勝巳(さきもと かつみ)
1965年京都生まれ。京都在住。eビジネス、組織論、創業、ベンチャー、経営戦略、現代思想にとても高い関心を持つマーケティングのコンサル屋。

関西ベンチャー学会 理事 http://www.kansai-venture.org/

大阪市立大学・大学院創造都市研究科アントレプレナーシップ研究分野
「創業アドバイザー」 http://www.gscc.osaka-cu.ac.jp/

起業・マーケティング・eビジネスによく効くメルマガ「週刊☆ビジマ」発行人
http://www.mankai.biz/

【あとがき】

9月29日・30日と久しぶりに東京に出張する予定。
東京国際フォーラムで開催の「イノベーションジャパン2004」を視察するためである。
最近は全てのクライアントが京都府下の企業なので、たまにイベント出演や会議で大阪に出向く以外には、遠方に出向く機会がなくなってしまっていたところ。
近日お取引させていただくコンサル案件数社のうち、やっと1社だけが京都以外になりそうという状況だ。
これからも当分の間は、京都だけをターゲットにして動いていき、派生的に依頼が入ったことで京都以外のお仕事をお請けするというスタイルは変わらないであろう。
それにしても今の私にとって、京都商工会議所の存在は、コンサルをしていく上でとっても大きい。

私のことはWebでガラス張り公開中→ http://www.sakimoto.biz/
mailto:sakimoto@tokeidai.net
(ご意見・ご感想・ご提案お待ちいたしております)
(2004/09/20)

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