2004/3/5 金曜日

高台寺庭師の戦略クラフティング

Filed under: 経営戦略 — 咲本 @ 22:14:28

『ビジネスにマーケティング☆を走らせよう!』に掲載
http://www.mankai.biz/

「高台寺庭師の戦略クラフティング」

マーケティング・コンサルタント  咲本 勝巳

みなさん、こんにちは!咲本です。

今回はこのコラムで三度目のご紹介となる、高台寺公認庭師北山さんを事例に、ミンツバーグが提唱する「戦略クラフティング」の考え方をご紹介させていただこうと思います。

この「クラフト」という視点は、以前、「リーダーシップのトライアングル」として、リーダーシップには、アート、サイエンス、クラフト(工芸)の三要素があり、成功しているリーダーに共通しているのは、このうちの2つに秀でているという説をご紹介しました。

まあ、そのようなイロイロな意味を兼ねた続編です(笑)

▼ アートとサイエンスの中間がクラフト

まずは、復習を兼ねて始めましょう。

戦略におけるアートの側面とは、知らず知らずのうちに生まれてくる、あるいは偶然生まれてくるひらめきのようなものを指します。
これは純粋な「創発戦略」と言い換えることができます。

一方で、純粋に思考・分析からプランニングされた戦略を策定するという側面がサイエンスです。

クラフト的側面とは、ちょうどその中間に当たります。

単なるひらめきだけではなく、経験に裏打ちされた暗黙知が働きます。
思考することだけに没頭するのではなく、思考と同時に作品に手も動いているというものです。

では、もう少し具体的に戦略クラフティングがどんなものなのか、庭師北山さんを事例にご説明させていただきましょう。

▼ 庭師北山氏の戦略クラフティング

彼は春と秋に行われる高台寺夜の特別拝観に伴い、ライトアップのプロデュースを行われています。
http://www.crafting.jp/blog/project_management/

北山氏は、庭師として植木と石について精通されているだけでなく、灯りについても、過去のライトアップの経験で深い知識を持たれています。

毎回お寺としては異例のアバンギャルドなライトアップでは、アクリル板、着色されたガラス棒、素焼きの器など、様々なものを利用されるのですが、それの制作を職人さんに依頼された段階では、ライトアップのプランニングができていません。

つまり、ごく大きなコンセプト(哲学に近いかもしれません)を職人さんに伝えるだけで、あとは職人さんの創意工夫にお任せされています。

普通、大企業によく見受けられるサイエンス的側面を重視している場合では、事前にプランニングし、戦略策定してから行動に出るはずなのでしょうが、彼の場合、それが当てはまりません。

この姿勢を、ミンツバーグは「アンブレラ戦略」と呼んでいます。

ミンツバーグの発言を引用しますと、
まずシニア・マネジャーたちが大まかなガイドラインを設定する。たとえば、最新技術を用いて高マージンの商品だけを製造する、あるいは既存技術を用いて製造できる商品を優先するといった類のものだ。そして、その細目については部下たちに任せる。
このアンブレラ戦略は、プランニング(上層部からのガイドライン)だけでなく、創発のプロセス(具体的なプランの作成)も含んでいる。加えて、戦略が途中で発展するように意図的に管理していくという点で、計画的に創発を促すアプローチと呼べる。

つまり、ガイドラインを設定しつつ、未確定な余地を残し、その点に依頼された側の創意工夫をさせるように促していくことで、当初依頼した時点では予想だにしなかったような、開いたカサのように大きな拡がりを見せ、発展をしていく戦略です。

依頼したものが出来上がった段階、例えば、色のついたガラス棒が納品された段階でも、まだどんなライトアップ作品となるのかが決まっていません。

そこから、実際にライトを当ててみて、どのような光り方をするのか確かめてみながら、ガラス棒の配置の仕方や、色の違ったガラス棒の組合わせ方、光の当てる角度、光の色、などなど、様々な事柄について、試してみながらの試行錯誤が始まります。

この試行錯誤は通常、記者発表直前の段階まで、念入りに行われます。

光の当て方をRGB3色の発光ダイオードを数箇所配置し、その発光具合を数十パターン、パソコンで制御して変化させていくわけですので、たいへんな手間です。

この姿こそ、戦略クラフティングの世界です。

ミンツバーグの説明を拝借しますと、
ある日は考え、別の日は仕事に専念するという工芸家はいない。工芸家の頭は
その指とつながっている。にもかかわらず、大企業では頭脳と指の動きを分離しようとする。その結果、頭脳と指の間に不可欠なフィードバック・ループを断ち切ってしまう。

これは、悪い意味でサイエンスの側面だけが突出する場合のことを指摘しているのでしょう。

ついでに脱線しておきますと、マネジメントを語る古典的な経営学の大家も、マネジャーの仕事に無知または大きな誤解をしたまま、マネジメントを語っている場合が彼の指摘でたいへん多いことがわかります。

例えば、経営者の仕事について説明される際によく使われる「POSDCORB」。
P:Planning(計画化)、O:Organizing(組織化)、S:Staffing(人員配置)、D:Directing(指揮)、C:Coordinating(調整)、R:Reporting(報告)、B:Budgeting(予算化)

これらの事柄についていくら説明されたとしても、マネジャーにとって何も役に立たず、せいぜいのところ、「われわれが無知である領域に名称をつけるのに役立」つ程度のものだったことがわかります。

役に立たないことの事例として、次のような引用がなされています。

本社販売担当重役の何人かは、計画作成を各営業所の管理活動の一つとみなしている。しかし、計画作成という活動は、分析、技術、および人間関係スキル以上のものなのだろうか。また、マネジャーは、本当に腰を落ち着けて、セールスマンの育成・監督、製品の需要予測、営業所の運営などの個別問題を関知せずに「さて、これから計画づくりをしなければならない」などと定期的に公表するものであろうか。

「山のような仕事を間断のないペース」で行っているマネジャーに、POSDCORBに
分割してひとつひとつのフレームワークについて説明されても、使えるレベルとしてのことを考えますと、あまり説得力のない場合が多いのです。

そんな知識吸収のためのセミナーが世の中に蔓延しているのも嘆かわしいです。

以上、余談です(笑)

▼ 変化の激しい時代には戦略クラフティングの視点を

過半数の大企業は、戦略策定なしのまま行動に出ることに、大きな不安感がある
のかもしれません。

しかし、これだけ世の中全体は変化の激しい時代となってくれば、プランニング
「だけ」では、難しいのではないかと思います。

つまり、それ「だけ」であれば、「これは戦略を創造する行為ではなく、既存の戦略をプログラム化し、実施させる手段なのだ。本質的にそれは、要素還元的な分析作業である」のです。

かといって、創業予定者の一部に見受けられるような、ひらめき一発で勝負というのも、特に既存企業ではどの企業でも必要な機会ごとにひらめきが出るのかという点で不安定さを感じます。

では、その「中間」に位置する「クラフティング」的な視点を得るには、何が必要となってくるのでしょうか?

実は、私個人として、ネットバブルの頃に、アイデア一発勝負のビジネスモデルが多数存在し(今でも見受けられますが)、そのようなビジネスモデルのほとんどに、クラフト的視点が見受けられなかったことに愕然とした記憶があります。

クラフト(工芸)の世界とは、
「長年来の伝統技能、わが身の献身、ディテールへの精通によって、初めて完璧さが得られる。クラフティングについて我々の心に浮かんでくるイメージは、思考や理性ではなく、むしろ長い経験や没頭、手持ちの素材への愛着、バランス感覚といったものである。形成していくプロセスと実行するプロセスとが学習を通じて融合し、その結果、独創的な戦略へとだんだんと発展していく。」

結局何が必要かと言いますと、私流にアントレプレナー・マインドについてお話した、そのマインドと、その事業における深い経験と愛着です。
http://www.crafting.jp/blog/entrepreneurship/

戦略クラフティングとは、このようなマインドを持ち、深い経験により細部にも眼の行き届く人の「プロセス」を重視した戦略なのです。

私のようなコンサルティングを行う身としては、まるで未来予測ができる超人であるかのような戦略策定を行うことには全く興味がなく、私よりもはるかに商品・サービスの知識に精通されたクライアントさんが、戦略クラフティングされる土壌が醸成され、その結果、独創的な戦略が発生していくきっかけを与えるようなことが出来た方が、はるかにコンサルティングを行った気分となるのです(笑)

なぜなら、「戦略をクラフティングする際、将来組織に甚大な影響を及ぼしかねない、かすかな非連続を察知することにチャレンジしなければならない。そのための手段やプログラムなど存在しておらず、ひたすら状況と接触し続けることでその観察力を研ぎ澄ますしかない」からです。

ここまで言えば概ねおわかりでしょうが、企業側として必要とされるのは、
「工芸家は、他人が見逃してしまうような事象を観察したり察知したりできるよう、訓練しなければならない。戦略のクラフティングにも同じことが要求される。
すなわち、何か事が起こりかけた時には、それを鋭く感知し、最大限活用できる
よう、多様な視点から観察できる能力を備えることである。」

【参考文献】
大多数 「ハーバード・ビジネス・レビュー」2003年1月号(ダイヤモンド社)
一部  ヘンリー・ミンツバーグ『マネジャーの仕事』(白桃書房)

■プロフィール
咲本 勝巳(さきもと かつみ)
eビジネス、組織論、経営戦略、創業、ベンチャー、現代思想にとても高い関心を持つマーケティングのコンサル屋。

大阪市立大学・大学院創造都市研究科アントレプレナーシップ研究分野「創業ア
ドバイザー」 http://www.gscc.osaka-cu.ac.jp/

関西ベンチャー学会 理事 http://www.kansai-venture.org/

関西SOHOデジタルコンテンツ事業協同組合 理事
http://www.kansai-soho.or.jp/

相変らず、人脈サイトorkut.comでお知り合いが増えていっているのですが、まだまだ新規登録の人達が増えていますので、最終的には200人くらいのお知り合いになるのではないかなあと予想しています。

6 digrees of separation(6次の隔たり)の議論、つまりは6クリックで世界中の人達と繋がるという話がありますが、これは大きな間違いで、劇作家のジョン・グエアがブロードウェイ上演で使い、そのヒット後に映画化されたことから普及したらしい。
社会心理学者のミルグラムがそのような研究はしていたが、「6次」ということは、決して言っていない。

実際、Webでのリンクは19次の隔たりがあるという。

そんな話が満載なのが、アルバート=ラズロ・バラバシ『新ネットワーク思考』です。

そういえば、KNN神田さんもどこかのコラムで、この本から「ベーコン指数」なるものを発見して紹介してたっけ。

私についてご興味のある方は硝子張り公開→ http://www.sakimoto.biz/

mailto:sakimoto@tokeidai.net
(2004/03/05)

2004/2/16 月曜日

マネジメント

Filed under: 経営戦略, 読書 — 咲本 @ 9:26:44

『日刊SOHOのツボ!』に掲載
http://www.soho-union.com/soho/

「SOHOによく効く書籍」(#003)
咲本@時計台ネット

【○】本日のお題「マネジメント」━━━

みなさん、こんにちは!咲本です。

前々回、『はじめの一歩を踏み出そう 成功する人たちの起業術』に、事業を立ち上げる人には「起業家」「マネジャー」「職人」という3つの人格を併せ持っており‥‥、というくだりがあることをご紹介しました。

そして前回には「起業家」的人格、とりわけ「アントレプレナーシップ」と呼ばれるものがどのようなものであるのかについて、書籍をご紹介いたしました。

さて、今回は「マネジャー」的人格に効く書籍をご紹介いたします。

マネジャーの仕事ヘンリー・ミンツバーグ『マネジャーの仕事』


マネジメントについて語る前に、それではマネジメントを行使するマネジャーとは一体どのような仕事をしているのであろうかということを把握しておくことが重要です。

本書でミンツバーグがそれを解明するまでは、マネジャーの職務について具体的な事柄が何も知られていないまま、マネジメントの議論がなされてきたのです。

マネジメントを語る経営学の大家も、マネジャーの仕事に無知または大きな誤解をしたまま、マネジメントを語っている場合が多いことが明らかになります。

例えば、経営者の仕事について説明される際によく使われる「POSDCORB」。
P:Planning(計画化)、O:Organizing(組織化)、S:Staffing(人員配置)、
D:Directing(指揮)、C:Coordinating(調整)、R:Reporting(報告)、
B:Budgeting(予算化)

これらの事柄についていくら説明されたとしても、マネジャーにとって何も役に立たず、せいぜいのところ、「われわれが無知である領域に名称をつけるのに役立」つ程度のものだったことがわかります

役に立たないことの事例として、次のような引用がなされています。

本社販売担当重役の何人かは、計画作成を各営業所の管理活動の一つとみなしている。しかし、計画作成という活動は、分析、技術、および人間関係スキル以上のものなのだろうか。また、マネジャーは、本当に腰を落ち着けて、セールスマンの育成・監督、製品の需要予測、営業所の運営などの個別問題を関知せずに「さて、これから計画づくりをしなければならない」などと定期的に公表するものであろうか。

本書ではマネジャー達の観察を多くの文献情報により補強し、
マネジャーの仕事にある6つの明確な特徴
マネジャーの仕事上の10の役割
などが明らかにされています。

様々なマネジメント書を読む前のはじめの1冊としてこの本を読まれることで、マネジャーとして取組む際に、机上の空論となるビジネス論を見分けることのできる眼差しを持つことに貢献してくれます。

マネジメント - 基本と原則  [エッセンシャル版]P・F. ドラッカー『マネジメント - 基本と原則 [エッセンシャル版]』


本書をひとことで言いますと、マネジメント論を代表する必読教科書となるものです。

世界中で長年にわたり絶賛され続けている本です。

明快であり、いつまでも記憶に残りやすい名言だらけです。

でも私は敢えて批判もしておきます。

それは、ドラッカーでさえ先程ご紹介した「POSDCORB」をベースに説明しているのです。

マネジャーが日々立ち向かう現実は、複雑で時間の余裕もなく、計画したことがすぐに変更せざるを得ないものであり、ドラッカーのように明確に語れる世界とはほど遠いがゆえに、ドラッカーのいうように実践できるというのは非現実的といえます。

つまりマネジメントを評論家として説明するには便利であるけれど、実際にマネジャーがそのまま「使える」というものではありません。

そういった前提で読まれませんと、単なる評論家としての知識にしかならないと私には思えます。

MBAコースでは教えない「創刊男」の仕事術くらた まなぶ『MBAコースでは教えない「創刊男」の仕事術』


前2作とは本の趣が全く違います。

著者はリクルートに20年勤務する中で14のメディアを創刊させた方で、彼のやってきた経験から、仕事に「使える」ものを目指して書かれたのが本書です。

人の会話を事例に出されている点が非常に多いです。

これはマネジャーの特徴として、文章にすることよりも、圧倒的に口頭で済ますことが多いことにもよるのでしょう。

「使える仕事術」というだけあって、ホントにそのように思える術がたくさん散りばめられています。

これを実用書として読むことが普通かと思うのですが、私の提案として、本書に書かれた指摘が、ミンツバーグとドラッカーの発言のどこを指して言っているのか、対比させて読んでいきますと、奥行きのあるマネジメントについての考え方が得られるのではないかと思います。

▽ 補足

マネジメントの教科書的なものとしましては、ジョアン・マグレッタ『なぜマネジメントなのか』も体系だててバランスよくまとめられた本だと思います。

なぜマネジメントなのか―全組織人に今必要な「マネジメント力」


これ以外にもマネジメントに関する本は、実にたくさん発行されています。

しかしながら、教科書的な本をいくら読みましても、実務としてのマネジメントに直接役立つとは言い難いわけです。

これらマネジメントの教科書的な本を読まれるのであれば、必ずミンツバーグの前掲書を先にお読みになってから、つまりはマネジャー像をしっかりと持たれ、その像に当てはまるように頭の中で再構成されて理解されるべきであると指摘しておきます。

次回は、「SOHOによく効くeビジネス書」についてお話する予定です。

【プロフィール】
咲本 勝巳(さきもと かつみ)
1965年京都生まれ。京都在住。eビジネス、組織論、創業、ベンチャー、経営戦略、現代思想にとても高い関心を持つマーケティングのコンサル屋。

関西ベンチャー学会 理事 http://www.kansai-venture.org/

大阪市立大学・大学院創造都市研究科アントレプレナーシップ研究分野「創業アドバイザー」 http://www.gscc.osaka-cu.ac.jp/

起業・マーケティングによく効くメルマガ「週刊☆ビジマ」発行人
http://www.mankai.biz/

今、オークト.comにハマっています。 http://www.orkut.com/
Googleのエンジニアが開発した出会い系サイトです(^^;
英文サイトなので最初はちょっと戸惑いますが、少し慣れてくれば、結構楽しめます。
登録されている方からのご招待がない限り、登録することができないという、いかにもクチコミ的に爆発しやすい仕組みとなっています。

登録したいとご希望の方は、私にメールを下さいね。
ご招待させていただきます。

私のことはWebでガラス張り公開中→ http://www.sakimoto.biz/
mailto:sakimoto@tokeidai.net
(ご意見・ご感想・ご提案お待ちいたしております)
(2004/02/16)

2004/2/13 金曜日

仏壇屋さんの’誠実’戦略

Filed under: 経営戦略 — 咲本 @ 23:00:55

『ビジネスにマーケティング☆を走らせよう!』に掲載
http://www.mankai.biz/

「仏壇屋さんの’誠実’戦略」
マーケティング・コンサルタント  咲本 勝巳

みなさん、こんにちは!咲本です。

今回はお仕事でお付き合いさせていただいている仏壇屋さんのことをお話させていただきます。
コラムでご紹介させていただいても良いとのパーミションを、快くいただきました。

▼ 仏壇屋さんの世界でも産地偽装が!

食品を中心に産地や賞味期限などの偽装事件が多発していますが、仏壇の業界でも、最近仏壇の産地を偽装する業者さんが増えています。

どういうことかと言いますと、良質の素材を使用し、京都の職人さんによる高い技術レベルによる独特の工法によって作られた仏壇は、「京仏具」と呼ばれ、値段も高いが品質も極上のものとして昔から評価されています。

ところが、お寺さんから見積提示を求められたアイミツの席で、とても京仏具としてあり得ない安値を提示し受注して、その結果、中国など他産地で粗悪品を製造したにもかかわらず、高級仏壇として納品するというアコギな仏壇業者が存在するらしいのです。

以前、『「非対称情報」のマネジメント』と題して書きましたモラルハザードの状態が起こっているわけです。
コラムはこちら→ http://www.crafting.jp/blog/unsymmetrical_information/

非対称情報であることをいいことに、産地偽装をして販売した結果、買い手側はどんなことになっているのでしょうか?

正規に「京仏具」と呼ばれるものでしたら、100年近く使用でき、古くなってきましてもいい「風合い」が出てきます。
あらかじめ木彫部分などもバラバラに分解できるようになっているため、修理もしやすく作られています。

一方、中国製仏壇の10年後の姿を画像で見せてもらったことがありますが、金箔がボロボロに剥がれてしまい、見るも無惨な状態になっていました。

通常、お寺さんの仏壇は、檀家さん達の寄付を集めてオーダーされるものですので、10年もすればボロボロになってしまう仏壇を目の当たりにして、お寺さんと檀家さんは、そうなってからどのように対処すればよいというのでしょうか?

少々割高でもホンマモノの「京仏具」を購入した方が、コストパフォーマンスがいいに決まってます。

家庭向けの仏壇を例に安売り業者のやり方をご紹介いたしますと、「京仏具」という名と似て非なる「京型」という名乗られた低品質の仏壇を、自店平常価格の70%とか80%引きの特価とみせかけて販売する方法が横行しています。

実はこのコラムを書いている2月12日の京都新聞朝刊折込広告の中に、ちょうどそのような仏壇屋だと思われる「お彼岸半額大会」なるイベント開催案内のチラシを見かけました。

あまりにも二重価格表示ミエミエでしたので、私は公正取引委員会近畿事務所に問い合わせをしまして、その結果チラシと状況説明書とを一消費者の立場で郵送することにしました(苦笑)

私のお付き合いさせていただいている仏壇の製造・販売をされている(株)小掘という会社があります。

(株)小掘は、ホンマモノの「京仏具」をお寺さんや一般のご家庭向けに提供され続けている会社です。

でも、非対称情報を悪用した業者と比べますと、どうしても価格は高くなってしまいます。

では、(株)小掘は、産地偽装をしてインチキ臭い安売りを行う悪徳業者ではなく、ホンマモノの「京仏具」を提供する企業であるという信頼性をどのようにして勝ち取ろうとされているのでしょうか?

▼ 「誠実」を情報発信

この会社を訪問していつも感じますのは、社内に「誠実」の空気がみなぎっていることです。

社長さんや専務さんにも、「なぜ?」と思えるほど謙虚で低姿勢な印象を抱きます。

これはなにも空気だけのことではなく、実際に「誠実」を基本戦略にされて実践に踏み切っていられます。

ちなみに、この「誠実」というコトバ自体は、私が勝手にそのように感じるから言っているだけでして、(株)小掘として常日頃から「ウチは誠実やねん!」と言われてるということではありません(笑)

でも、以下お読みいただければ、私のいう「誠実」の意味を少しはわかっていただけるのではないかと思います。

そこで、まずは(株)小掘のホームページを見てみましょう。
http://www.kobori.co.jp/

トップページ下部の方に並ぶ、社長、専務、ホームページ担当者、総合サービス係の顔写真、フルネーム、しかもそれぞれのメールアドレスまでが表示されています。

もし商売の姿勢に少しでも後ろめたさがあれば、ここまで「顔出し」することが果たしてできるでしょうか?(笑)
別に普通の企業でも、出来ない企業の方が圧倒的に多いかと思います。

また、これは「誠実」をモットーに情報発信しよう、お客様にはお店と同じようなおもてなしの心を持ってホームページでも接しようとの意識が高いからこそできることだと思います。

極めつけは、その上部にあるお寺さん向けの「製作工程報告サービス」です。

受注のあったお寺さんごとに専用ページを用意され、自社工房での各製造工程の状況を画像と職人さんのコメントによって、製造工程の過程を確認することができます。
サンプルページは↓
http://www.kobori.co.jp/k2003/s-houkoku/sample1/sanmple1/sanmple_kuden1.html
http://www.kobori.co.jp/k2003/s-houkoku/sample1/sanmple1/sanmple_kuden2.htm

最早ここまで実践されますと、産地偽装の余地はありません。

トップページの更に上の方を見ますと、京都本店内と仏具工房内に設置されたライブカメラを、誰もが見ることのできるコンテンツが用意されています。

これによって、例えば経営陣の方々が普段から工房のスタッフさん達に「決してお仏壇をまたいではいけない」と口を酸っぱくして言われていることが実践なされているかが、確認できるようになっています。
店員さんが鼻クソをほじったりしていないかも確認できます(笑)

「誠実」に仕事に取組んでいます!とページに書くことは、いとも簡単です。
しかし、それだけでは情報の真偽はわかりません。

不祥事を起こした企業サイトを見て回りましても、「当社は不誠実な企業だ」と正直に書かれることは決してありません(笑)

ここまでの情報発信ができるということは、スタッフ一同が「誠実」の実践をしているという自信がないとできないことだと思います。

そして、トップページ最上部あたりには、「冊子進呈」のボタンやリンクが散りばめられています。

高額商品を販売されている会社ですので、やはりまずは資料請求をしてもらい、資料によるある程度のご納得を得て、ご来店され、購入されるという流れが、ネットを販促に活用する場合には自然かと思います。

でも、高額商品の典型的なもの、例えば、リクルートのISIZE住宅情報のコンテンツを利用してみて、住宅メーカーのカタログを大量に請求してみますと、「ちょっと近くまで来ましたもので‥」なんてミエミエの口実のもと、たくさんの営業マンが飛び込みでセールスに来ます。←私は過去に実験済みです(笑)
http://www.isize.jutakujoho.jp/

(株)小掘は、「誠実」を実践したいがゆえに、そのようなぶしつけなセールスを一切行わないことを、「わたくしたちの約束」として明確に宣言されています。
http://www.kobori.co.jp/k2003/form/yakusoku.html

もし万が一、顧客対応について何か失礼があった場合には「お客様の声」という名の掲示板に、誰の目にもわかるように怒りの書き込みをすることもできます。
社長・専務や総合サービス係に直メールで抗議することだって可能です。

しかし、このような取組みをいくら行っていたとしましても、ホームページは訪問してもらいませんと、せっかくの誠実さもお客様に伝えることができません。

このあたり、検索エンジン最適化(SEO)対策にも取組んでおられ、検索エンジンGoogleで「仏壇」というキーワードで検索すれば、184,000件中5番目に表示されますので、多くの訪問者を得ることに成功されています。(2月12日現在)
http://www.google.co.jp/

更には、検索エンジンマーケティング(SEM)にも取組まれ、Googleアドワーズ広告という、ユーザー側の利便性本意に作られた、費用対効果の高い広告掲載を続けられており、既にサイト誘導に結び付けるための一定のノウハウを持つに至っておられます。

SEOとSEMが功を奏して、Webサイト来訪者大幅増加→資料請求件数大幅増加→請
求者からの購入件数大幅増加という好循環があっという間に生まれました。

ほかにもユニークなのは、「スタッフの悲鳴」というコンテンツがあり、ホームページ担当者は勿論のこと、様々な社員さんが個人日記を書き込まれていることです。
http://www.kobori.co.jp/cgi-bin/sunbbs1/index.html

企業Webには、制作業者さん任せにして小ぎれいにさえ作っておけば良いとの考えを持たれているケースがほとんどかと思われます。

しかし「スタッフの悲鳴」によって、ホームページ担当社員さん以外もホームページに参加されているわけで、こんなところからも口先だけではない社員さん達の包み隠さない「誠実」さを感じ取ることができます。

最近では、ネット上から直接仏壇を購入したい方向けに、ECサイトを立ち上げられました。
http://store.yahoo.co.jp/kobori/

なんと驚くことに、Yahoo!ショッピング全出店企業の中で、ケタ違いの最高価格を誇る5,000万円の仏壇も購入できるようになっています。
http://store.yahoo.co.jp/kobori/takumi.html

▼ 広報の積極的取組み

以上、多岐にわたってホームページ上での実践をご紹介してきましたが、勿論、ホームページ上ばかりで「誠実」を実践していらっしゃるわけではありません。

全て挙げ出しますと、膨大な量になってしまいますので、1点だけご紹介しておきましょう。

仏壇業界では、テレビや新聞の広告を使う例を多く見受けられますが、それに対して広報に力を入れることに力点が移ってこられています。

広報重視とは、「週刊☆ビジマ」コラム執筆者の植木さんと同じですよね。

なぜ広報を重要視するのかは、「誠実」が伝わりやすいのは、ウソ八百の自画自賛ができる広告重視の方法よりも、第三者の取材による客観性の高い記事などで取り上げられる広報の方であるからです。

広報を実践する上でのメリットは、植木さんの過去のコラムからいくらでもご理解いただけるでしょうから、ここでは省略いたします。
植木さんの過去コラム→ http://ueki.biz/

そのような広報を行っていくことにより、地元の京都新聞は勿論のこと、大手新聞にも頻繁に記事掲載されるようになっておられます。
http://www.kobori.co.jp/k2003/pressrelease/re-pressrelease.htm

現在は広報戦略やその他たくさん新たな展開が始まり出しています。
内容は、まだヒミツです(笑)

その他今までに実践されてこられた事柄は、上記URLのマスコミ掲載記事をご覧になれば、その一部を垣間見ることができます。

▼ 最後に

京都の伝統産業全体が不況産業といわれることが多く、市場の閉塞感を感じるからなのか、一部の業者が悪徳な商売さえ行っている状況にあります。

そんな中、(株)小掘の取組みを観察していけばいくほど、暗雲の時代に入ったかのように見えなくもない伝統産業の世界にも、未来に向けて伸びる一条の光が見えてくるように実感できるのです。

(株)小掘の姿から、ふと、ジム・コリンズの『ビジョナリー・カンパニー』の一節が脳裡に浮かびました。

最後にその一節をご紹介しておきましょう。

決定的な点は、理念の内容ではなく、理念をいかに深く「信じて」いるか、そして、会社の一挙一動に、いかに一貫して理念が実践され、息づき、現われているかだ。ビジョナリー・カンパニーは、「何を価値観とするべきか」と問いを立てることはない。「われわれが実際に、何よりも大切にしているものは何なのか」という問いを立てる。

ビジョナリー・カンパニーは、基本理念を信仰に近いほどの情熱を持って維持しており、基本理念は変えることがあるとしても、まれである。ビジョナリー・カンパニーの基本的価値観は揺るぎなく、時代の流れや流行に左右されることはない。‥‥ビジョナリー・カンパニーの基本的な目的、つまり、存在理由は、地平線の上で輝き続ける星のように、何世紀にもわたって、道しるべになることができる。しかし、ビジョナリー・カンパニーは、基本理念をしっかりと維持しながら、進歩への意欲がきわめて強いため、大切な基本理念を曲げることなく、変化し、適応できる。

■プロフィール
咲本 勝巳(さきもと かつみ)
eビジネス、組織論、経営戦略、創業、ベンチャー、現代思想にとても高い関心を持つマーケティングのコンサル屋。

大阪市立大学・大学院創造都市研究科アントレプレナーシップ研究分野「創業ア
ドバイザー」
関西ベンチャー学会 理事
関西SOHOデジタルコンテンツ事業協同組合 理事

今回のメルマガが記念すべき?第100号目となりました。
これからもコラム執筆者数が増える予定で、いよいよ「週刊☆ビジマ」から、「日刊☆ビジマ」と誌名を変える日も近い!?

私についてご興味のある方は硝子張り公開→ http://www.sakimoto.biz/

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(2004/02/13)

2003/7/25 金曜日

起業家精神とは?その新しい定義を求めて」:ミミズの起業家精神(6)大幅改訂版

Filed under: 経営戦略 — 咲本 @ 22:35:46

『ビジネスにマーケティング☆を走らせよう!』に掲載
http://www.mankai.biz/

「起業家精神とは?その新しい定義を求めて」:ミミズの起業家精神(6)大幅改訂版

マーケティング・コンサルタント  咲本 勝巳

みなさん、こんにちは!咲本です。

今回は起業家精神(アントレプレナー・マインド)についてお話させていただきます。

よく使われるコトバの割りには、今ひとつ明確にこういうものだと言えない方が多いかと思われるからです。
この際、このコトバの意味するところを整理しておきましょう。

「そんなん私は会社勤めなので関係ないって」なんて言わないで下さいね(笑)
そういう方ほど、ますます必要なマインドとなってきているように見えます。

なぜなら、様々な研修を受けたり資格を取得したりといった前向きな姿勢を否定はいたしませんが、そのようにして得た知識は、すぐに陳腐化していきます。

これから企業で評価される存在となるには、営業力、説得力、交渉力、企画力等々、個々の持つ高い能力であるわけです。
これらについての高い能力は、知識として学ぶことだけで獲得出来るものではありません。

そのためには、アントレプレナー・マインドを持って仕事に取組む経験の蓄積によって得られるものであると考えるからです。

▼ アントレプレナー・マインドの中味

ではさて、実際にアントレプレナー・マインドとはどういったマインドかを見てまいりましょう。

まずは、ビジネススクールの教科書的な位置付けとなる本から、その内容をご紹介しましょう。
その本を紐解きますと、「アントレプレナー・マインドの6大テーマ」として研究者間で合意に至っている特徴があるとのことです。

  1. 「コミットメントと強固な決意」:全面的献身と強固な決意は他のどの要件よりも重要である。全面的献身と強固な決意により起業家はあらゆる障害を克服し、自身の弱みを補うことができる。
  2. 「リーダーシップ」:起業家には明文化された権力によらず影響力を行使できる能力があり、紛争解決に熟練している。適材適所、筋を通すこと、説得、譲歩、命令を使い分けることができる。つまり、独裁者よりも調停者、交渉者であることが要求される。
  3. 「起業機会への執念」:起業家の執念は、ありふれたアイデア群から起業機会を識別し、業界、顧客、競争の経験、知識を持って起業機会に没頭する。
  4. 「リスク、曖昧性、不確実性に対する許容度」:起業家にとって変化、ハイリスク、曖昧性、不確実性は日常であり、パラドックスや矛盾にも適切に対処することができる。
  5. 「創造性、自己依存、適応力」:事業の存続・成長のために流動的で適応性に富み、迅速かつ効果的に対応できる組織形態を必要とする。自分の成果と挫折は自分の管理と影響力の範囲内であり、結果に影響を及ぼすことができると信じて疑わない。また、細かなことに労苦をいとわず、鋭い洞察力、概念化する能力(ヘリコプター・マインド)もある。彼らは現状に満足せず、常に創始者である。事業の成功または失敗に個人的に責任を取らなければいけないような立場に自ら進んで入り、リーダーシップを発揮して問題解決にあたるとともに、自分の影響力が評価されることを好む。自分の仕事の評価を知ろうとする貪欲な欲求があり、その改善のために積極的にフィードバックを得ようとする。成功する起業家には失敗経験から学ぶ能力がある。失敗に関わった自分の役割だけではな、他の役割もよく理解し、将来起こるかもしれない同様な問題を回避することができる。
  6. 「一流たらんとする欲求」:自らが定めた高い基準を追求し、挑戦的な目標を達成しようとする強い欲求に引っ張られる。地位や権力よりも達成意欲よって行動する。

以上の6点を挙げることが出来ます。

▼ 変化の激しい時代に求められるアントレプレナー・マインド

さて、「6大テーマ」は、どれも重要であるかと思われますが、これだけ変化の激しい時代になればなるほど、
4.「リスク、曖昧性、不確実性に対する許容度」
5.「創造性、自己依存、適応力」
この2つの重要度が急激に増してきています。

そこで、この2つのマインドを高めるための視点を補足させていただきます。

組織行動論・心理学の研究者、カール・E・ワイクは、原子力発電所や航空管制システム、救急医療センター、送電所などの一部に、普通の企業と比べますと、予測出来ない大惨事が起こリかねない過酷な条件下で活動しながら、事故発生件数を標準以下に抑えているのはどういう理由からなのか、との疑問から出発します。(このような組織のことを「高信頼性組織」と名付けられています。)

そして、それらの組織に共通して見られる特徴が高い「マインド」にあることを突き詰めます。

では、そのマインドの特徴5点を次にご紹介いたしましょう。

▼ 高信頼性組織にみられるマインドの特徴

1.「失敗から学ぶ」

  • 完璧な成功以外は全て失敗である。結果オーライではない。成功と考えれば、自己満足や不注意、画一的なルーチンを生み出す危険性が高い。
  • 小さな過失の報告を奨励し、失敗をすべて最大限活用する。
  • 時間の経過と共に失敗の責任が薄れることを認識の上、失敗後の学習を迅速に行う。

2.「単純化を許さない」

  • 状況の意味合いに注意を払うことで、世界観や考え方が多様化される。そして多様化されることで起こり得る結果がさまざまな像として描かれ、予防措置や問題の発生を示すシグナルについても深くさまざまなものが見えてくるようになる。
  • 状況の理解を深めるために、目に映るものを定義づけ(ラベルづけ)し、カテゴリー化する作業を基本的にやり直す。具体的には、捨てた情報の再検討、カテゴリーがどう予想に影響を与えたかの監視、意味がなくなった特徴の削除、という少なくとも3つのことを行う。
  • 計画を立てすぎない。計画とは無関係のように見えることにはまともに注意を払わなくなり、その場の状況に応じた即興的対応が入り込む余地がないからである。また、過去に成功した活動パターンを踏襲すれば一貫して高い成果が得られるということとなり、新しい現象に対応できなくなりからでもある。

3.「オペレーションを重視する」

  • 大惨事に効果的なパフォーマンスを出すカギは、状況、それもオペレーション全体の最新状況をつねに把握することである。全体計画の立案者に権限を集中させるのは良くない。
  • オペレーションを重視する姿勢は、状況の変化をつねに把握するための強力な手段となる。

4.「復旧能力を高める」

  • 不測の事態は起きるものとして、変化に素早く対応できる汎用的能力の育成に力を入れる。つまり、知識、速やかなフィードバック能力、迅速な学習、コミュニケーションのスピードと正確性、多様な経験、既存の対応策を組み換えるスキル、即興的な対応策などについて能力開発をするということだ。
  • 復旧能力の高い人は、予測することよりも緩和することを考える。不測の事態の影響を軽減する知識と能力に注目する。その考え方は予防より治療である。復旧能力は、考えながら行動する、あるいは明確に考えるために行動することを促すのである。

5.「専門知識を尊重する」

  • 重要な意思決定者という肩書きが、問題に適した専門知識をもつ人間あるいはチームによってなされる。
  • 意思決定の構造にヒエラルキー的な色合いと専門性の色合いをブレンドすることにより、基本的に地位よりも専門知識と経験が重要という、重要事項の意思決定の瞬間に忘れられがちな原則を認識し、実行する。

また、以上5点を簡潔に表現しますと次の通りとなります。

マインドの強化を目指すには、成功より失敗体験に関心を持つこと、処方箋や経験則に従うのをやめ、毎回一からはじめるつもりで行動すること、戦略や雄大なビジョンより戦術や基本に注意を払うこと、予防より事後対応に熟達すること、自分以外にもっと知識を持った人間がいるかもしれないという認識を持つことなどが要求される。

▼ まとめ~私の感じる点

以上、長文となってしまいましたが、アントレプレナー・マインドの定説に加えて、高信頼性組織に見られる高いマインドを持った際立った特徴を見てまいりましたが、いかがでしたでしょうか?

私はアントレプレナー・マインドには、「6大テーマ」に、「高信頼性組織に見られるマインド」を加えるべきであると考えます。
そうしませんと、緻密さと柔軟性とを兼ね備えた成功者独特のアントレプレナーマインドが、どうしても説明し切れないのです。

特に、
1.「コミットメントと強固な決意」
は、起業家全員が持っているはずですが、悪い意味で融通のきかない頑固者として機能する場合もあり、高信頼性組織のマインドを踏まえて発揮することが要求されます。

危機を事前に防ぐためのマインドとは、決してネガティブなマインドではなく、「攻める」ためにも必須です。

起業家を目指す方で、起業がうまくいかなかった方に、しばしば見受けることのある点としましては、

2.「単純化を許さない」

という点であることを指摘しておきます。

一方、企業に所属されている方全てが高いマインドを持つように心掛けていきませんと、多発している企業不祥事があなたの企業でも起こるかもしれないという点も指摘しておきたいと思います。

今、まさに企業に求められているのは、前回コラムでご紹介しました「非対称情報」のマネジメントと、今回のアントレプレナー・マインドであることを、しっかりと認識して、即実践に取り掛かりましょう。

【引用文献】
ベンチャー創造の理論と戦略―起業機会探索から資金調達までの実践的方法論ジェフリー・A ティモンズ『ベンチャー創造の理論と戦略―起業機会探索から資金調達までの実践的方法論』


不確実性のマネジメント―危機を事前に防ぐマインドとシステムを構築するカール・E. ワイク , キャスリーン・M. サトクリフ『不確実性のマネジメント―危機を事前に防ぐマインドとシステムを構築する』

■プロフィール
咲本 勝巳(さきもと かつみ)

eビジネス、組織論、経営戦略、現代思想にとても高い関心を持つマーケティングのコンサル屋。
関西SOHOデジタルコンテンツ事業協同組合 理事
関西ベンチャー学会 理事

7月28日(月)に京都全日空ホテルでパネルディスカッション「踊る京都の中小企業!その元気の源泉は?」と題してコーディネータをいたします(参加無料)
パネリスト
(株)小掘 専務取締役 小掘進 http://www.kobori.co.jp/
(株)鈴木水引店 代表取締役 鈴木久子 http://www.mizuhikiya.com/
(株)データ変換研究所 代表取締役 畑中豊司 http://www.dehenken.co.jp/
詳細・参加申込は↓
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私の所属する事業協同組合で日刊「SOHOのツボ!」なるメルマガを7月28日(月)に創刊します。
私もこのメルマガで「SOHOコンサルタントのツボ」なるお題で執筆してまいります。
10名の執筆者で100号発行した時点で、書籍化する予定でもあります。
某出版社とのヒソヒソ話も既にスタートしています(笑)
是非みなさん、こちらもご購読下さいませ!!
ご購読は→ http://www.soho-union.com/soho/

私についてご興味のある方は硝子張り公開→ http://www.sakimoto.biz/
(2003/07/25)

2003/7/4 金曜日

「非対称情報」のマネジメント

Filed under: 経営戦略 — 咲本 @ 23:56:55

『ビジネスにマーケティング☆を走らせよう!』に掲載
http://www.mankai.biz/

「「非対称情報」のマネジメント」

マーケティング・コンサルタント  咲本 勝巳

みなさん、こんにちは!咲本です。

さて今回のお話は、2001年にノーベル経済学賞に輝いた非対称情報の経済学をベースにしつつ、実践を標榜するこのメルマガらしく、「非対称情報」のマネジメントについてお話していきたいと思います。

この「非対称情報」の経済学、経済学部の学生さんなら、最早常識かと思いますが、私のような専門外の人間も多数いらっしゃるのではないかと思い、まずはこの経済学の考え方について手短にお話させていただきますね。

▼ 「非対称情報」の経済学とは?

この経済学では、市場の情報は不完全・非対称であると考えます。
伝統的な経済学では、市場の情報は完全で同質、対称的であると考えられてきました。

情報が非対称である例を挙げてみましょう。
例えば、中古車市場において、車の売り手とディーラーは、その車が欠陥車なのか、状態は悪くはないが買い換えるために売ろうとするものなのか、車の状態がほぼ正確にわかります。

その反面、車の買い手は、修理・整備が行われ、ピカピカになった中古車を見ましても、その車が事故車のような欠陥車であるのかどうかといった情報が十分にはわかりません。

このように情報が一方には十分あり、もう一方には不十分であることを、情報が非対称であるといいます。

欠陥車のことをこの経済学では「レモン」(トランプのババ抜きのババみたいなもの)と呼び、レモンを選んでしまうことを「逆選択」と呼びます。

▼ 情報化社会なのに増加するレモン

詳しいことはさておきまして、私達にとって重要なことは、情報化社会になればなるほど非対称情報は増加すると結論付けられているということです。

みんながインターネットで情報発信する社会になれば、非対称情報がなくなってくるのではないの?とお感じになった方も多いかと思われます。

確かに情報発信することは大変重要です。
しかし、情報化社会になればなるほど、個々の情報が専門特化されていき、そこに非対称情報が多くなってくる余地がたぶんにあります。

この非対称情報を逆利用して、お客さまに「レモン」をつかませようとする悪徳業者も発生しやすくなります(=モラルハザード)

こういう時代であるからこそ、「うちの会社のここをみて欲しい」という「シグナル」を示し続けることによって、レモンではないことを明らかにしていく「非対称情報」のマネジメントとでも名付ける活動が、企業に求められます。

「シグナル」を発し続けていかないと、レモンではないのにかかわらず、レモンかもしれないと疑われることにもなりかねません。

▼ レモンかもしれない某清掃用品レンタル大手企業

某清掃用品レンタル大手に、レモンである可能性が見受けられるニュースが流れました。

一度そのようなシグナルを出してしまうと、なかなかレモンであるというところから脱却出来ません。

では、この企業はレモンだとのレッテルを貼られないための、「非対称情報」のマネジメントが行われたのでしょうか?

その企業のトップページを見てみますと、Topics欄下部に「お詫び」ボタンが小さく付いています。
お詫び文の日付を見ますと6月4日となっていますが、実際にニュースで騒がれ始め出したのは、6月3日の朝です。
24時間以上経過しないと何もアップ出来ないというのは、「非対称情報」マネジメントがなされていない証拠です。

また、当初ボタンの色は、背景色と同じのものでして、非常にわかりにくくしてありました。
(その後、新聞の謝罪広告も掲載する時、つまり6月10日にボタンの色は現在のものに変わりました。)

Topics欄に更新情報が掲載されるわけなのですが、こちらには書かれていないということは、いずれこの情報はサイトから削除しようと思っているのではと勘ぐりたくもなります。(くさいものに早くフタをしたい!?)

ミスタードーナツの事件後、臨時株主総会で役員を刷新、情報の透明化を目指した組織改革を昨年秋から開始しているはずであり、3~4年後に東証に上場したいというこの時期に起こった今回の事件を、おそらく企業にとってのピンチあるいは脅威と受け止めてしまったのに違いありません。

▼ 弱みと脅威からの発想?

ここで有名なSWOTから今回の事件を考えた場合を想定してみましょう。
SとWつまり企業内部の強みと弱み、OとTつまり企業外部の機会と脅威の4つの側面から、どのように行動すべきかを考えた場合のことです。

特別背任罪で元役員が逮捕という事実からは、やはり弱みと脅威に該当させてしまうことでしょう。

となれば、ついつい「くさいものにフタ」をしたくなったり、あまりそのことには触れないようにしたくなるものです。

Webサイトから状況を汲み取るだけでも、この企業が弱みと脅威志向であることが伺い知れます。

でも果たして、このようなことで良いのでしょうか?

▼ 参天製薬の場合

ここで2000年に薬局の目薬に毒物を混入したと脅迫状の送られてきた参天製薬の対応を想い出していただきたく思います。

この企業は郵便物が届いた翌朝には、Webと記者会見で全国の薬局の目薬全品の回収を発表しました。

売上の損害という弱みや脅威にばかりこだわっていれば、このような大胆かつ迅速な対応をすることは出来なかったことでしょう。

では、なぜそのような決断が出来たのでしょうか?

いくつもの理由があったでしょうが、そのひとつには、弱みや脅威を考えるよりも、強みと機会(チャンス)をいかにモノにするのかと立場からの発想があったのではないかと私は考えます。

こういった事件は、強みと機会重視志向から考えれば、脅威どころか大きなチャンスをつかむ絶好の機会となるのです。

結果的には、いたずら防止の特殊フィルムに入った目薬で販売を再開後は、安全を第一に考えた大赤字覚悟の全品回収、迅速な決断と公表が、大きなイメージアップとなり、その年の決算は増収増益となりました。

▼ では、どのようにすればよかったのか?

某清掃用品レンタル大手も強みと機会重視志向であれば、今回の事件を大きなチャンスとする可能性はあったはずだと考えます。

情報の透明化に本当に取組んでいる最中であるのなら、私だったら事件直後に、すぐさま謝罪文を掲載します。
そして、最低でも1日1回以上、情報の透明化についての取組みについての進捗状況を公開し続けるようにいたします。

情報の透明化をすすめると言葉で発言しても、「どのように」透明化をすすめているのかとか、本当に透明化が進んでいるのかという点について、外部の人間は何もわかりません。

だったら、この企業はレモンだと言われないようにするためには、具体的な進捗状況を思い切って情報公開していくしか、それを払拭する方法がないかと思うのです。

で、そういった思い切ったことを始めるのには、今回の事件は絶好の機会だったはずなんです。

あ~あ、勿体ない(笑)

▼ 「非対称情報」マネジメント

さて、今まで事例を見てきましたことから、「非対称情報」マネジメントをすすめるにあたってのポイントを挙げておきましょう。

  1. 積極的な情報公開・情報発信が、ますます重要となってきている。
  2. 「当社はレモンではない」という発言には何の説得力もなく、そのように認識出来るに値する行動を見せなければならない。
  3. 強みと弱み、機会と脅威とは、物事を捉える際にあたっての裏腹な関係であり、強みと機会から発想することにしか、真の打開策はない。
  4. 以上の点について、日頃から全社的に徹底化した行動が出来ていなければ、突然起こる大きな事件ひとつで、雪印のように崩壊する可能性がある。

このコラムを書いている最中に、F1のエンジンを作っている(株)無限が、法人税法違反容疑で本田宗一郎の長男である経営者、本田博俊が逮捕されました。

この企業が、今回の事件をどのように対応するのか、「非対称情報」マネジメントの視点から見守っていきたいと思います。

■プロフィール
咲本 勝巳(さきもと かつみ)

eビジネス、組織論、経営戦略、現代思想にとても高い関心を持つマーケティングのコンサル屋。
関西SOHOデジタルコンテンツ事業協同組合 理事
関西ベンチャー学会 理事

今回のコラムは、先日の講演でお話させていただいたことを機会に、日刊「WEBのツボ!」というメルマガコラムで書きましたものを、大幅改訂したものです。
このメルマガは、実は私が編集担当しているものです。
ご興味がある方は、是非ご登録してみて下さいね。
http://www.soho-union.com/

7月12日に京都EGG例会で「インターネットでの商売で儲けるには?」と題して講演します。(参加無料)
この件につきましては、ご担当畑中氏: mailto:hatanaka@dehenken.co.jp

7月28日は京都全日空ホテルでパネルディスカッション「踊る京都の中小企業!その元気の源泉は?」と題してコーディネータをいたします(参加無料)
パネリスト
(株)小掘 専務取締役 小掘進 http://www.kobori.co.jp/
(株)鈴木水引店 代表取締役 鈴木久子 http://www.mizuhikiya.com/
(株)データ変換研究所 代表取締役 畑中豊司 http://www.dehenken.co.jp/
この件につきましては、ご担当井上氏: mailto:inoue@ki21.jp

私についてご興味のある方は硝子張り公開→ http://www.sakimoto.biz/
(2003/07/04)

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