2006/4/16 日曜日

愛と感動のレストラン「カシータ」のホスピタリティ(3/4)

Filed under: マーケティング — 咲本 @ 20:52:50

さて、料理が次から次と登場し、中でも久しぶりに食べるオマールエビがシンプルな味付けで個人的にはとてもおいしかったが、そうこうしているところに店長さんが挨拶にお越しになった。

名刺を差し出されたので、それにつられるように私も名刺を差し出した。

実はこのことが後になってのサービスに反映されることになる。

それにしてもお店側には取り扱いが難しそうな客だとうつっていたかもしれない。

さりげなく「私どもをどのようにしてお知りになりましたか?」と質問されたので、「オーナーのお話になっているDVDをある方からお借りしたり、カシータさんのWEBを拝見したり、検索してブログでの評判を見たりした結果、是非サービスを体験したくなりまして」と言ってしまったから。(笑)

食事中にはYさんとも様々なことを話し、それをいちいちここには書けないが、レストランに来る前に私が観てきた国立劇場でのピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団の公演については、感動したがゆえにいろいろと話していたことだけは間違いない。
あとで気がつけば、テーブルのそばに下の写真のような公演パンフレットが置きっぱなしになってしまっていた。

ピナ・バウシュ

料理は全て終わりましたということで、コーヒーを持ってきてもらうことにした。

そうしたところ、コーヒーに加えて、スタッフの方が‘Welcome to Casita!!’と言われながら下記のように飾り付けされたデザートをお持ちいただいたのだ!

カシータ2

白いプレート上にはデザートの盛りつけ以外に、チョコレートによって

  • Welcome to Casita!!
  • 私達客2人の名前
  • 時計台ネットとそのロゴマーク
  • ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団

といった文字が書かれていて、

ピナ・バウシュの舞踊団による公演の模様をプリントアウトした写真画像が貼り付けられていたのだ!

時計台ネットとそのマークは、さきほど店長さんと名刺交換した時に入手された情報を即反映させたもの。
ピナ・バウシュについては、おそらくテーブルそばに出しっぱなしにしていたパンフレットの情報と、店内に入ってすぐスタッフさんと公演の模様を話していたことから得られたもの。

あくまでも想像ではあるが、京都から東京へと公演を観に来た私にとっては、この体験が本日の貴重な思い出であろうから、このカシータの思い出と共に大切にしまっておいてもらいたいとの思いを表していただいたのではなかろうか。

この判断を現場を観察されながら、ピナ・バウシュの公演を大きくプレートで取り上げようと判断され、おそらくネットで大急ぎで関連画像を探し出されたのだろう。
そして複数のスタッフの情報をうまく集約させていかれたわけだ。

最後の最後になって出すデザートに、客ごとに違った状況を的確に反映させたものを作り出して提供するとは、これはマニュアルでなんとかできる領域を完全に超えたサービスだ。

毎日数組の客だけを相手にしてサービスを提供するのであれば、頑張ればできなくもないと思われるかもしれないが、カシータの場合には130坪ものスペースが毎日予約で満員となる数をさばいているのである。

どこかにある安物の居酒屋のように、忙しそうなスタッフの素振りばかりが目立ち、注文もロクに聞いてもらえないというどころか、担当らしいスタッフさん以外からも名前でお声掛けいただける上に、複数のスタッフさんから公演はどうだったかの質問が出るほど、私のことをわかってくれている。

スタッフのみなさんは、誰もが気持ちの良い笑顔で接してくださる。

メニュー用紙に書かれている“わがままなお客様こそレストランの楽しみ方を知る上級者である”との文言は、客からの無理難題に喜んでこたえようと本気で考えている証拠なのであろう。

そばのテーブルで食事していた中年男性グループには、お店所有のポラロイドカメラで記念撮影をされていた。
おそらく何らかの意味で特別な日であったのだろう。

このように行き届いた感動すら誘うサービスを、どうして行っていくことができるのだろうか?

私はカシータの内実について少しでも多くを知りたくなった。(続く)

【サイト内関連ページ】
愛と感動のレストラン「カシータ」のホスピタリティ(1/4)
愛と感動のレストラン「カシータ」のホスピタリティ(2/4)
愛と感動のレストラン「カシータ」のホスピタリティ(4/4)

2006/4/15 土曜日

愛と感動のレストラン「カシータ」のホスピタリティ(2/4)

Filed under: マーケティング — 咲本 @ 20:41:19

そうこうしているうちに本日の相方Yさんがお店に到着。
Yさんも私と同じく初めてのお店であったが、いきなり名前で呼ばれることに驚いていた。

カシータ5

私の名前の書かれたメニューをほどいて見てみた。

1ページ目はお店のご案内、料理メニューは2ページ目以降。

ちなみに1ページ目のお店ご案内の内容についてご紹介すると、

お店のテーマが「アジアの高級リゾート」

130坪ものスペースは5つのコンセプトにより空間分けされていて、

  • シェフと相談しながら、旬の食材を自分でアレンジできる“Charcoal Bar”
  • 高いホスピタリティを御堪能いただける“The Main Dining”
  • どんなパーティの御要望にもお応えできる“The Executive dining”
  • 夕日をみながら食前酒をお楽しみいただける“The Deck lounge”
  • 星空を見ながら食後の余韻を満喫いただける“The Terrace”

と書かれている。

これだけであると「なんだか気取りやがって」という、斜に構える向きがいらっしゃるかもしれないが、この記述に続いて

何かございましたら、下記のスタッフを始め
お近くのスタッフにお気軽にお申し付けください。

として、General Manager、Executive Chief、Floor Manager、Chief Concierge、Maitre d’hotel、Lounge Managerの名前が堂々と記載されている。

これも私の名前を印刷したものを用意するくらいだから、おそらくその日によって若干変わるスタッフ体制を反映させていることなのであろう。
スタッフ名でお呼びして欠勤していたのではガッカリするだろうから。
ちなみに、電話した際に予約を受け付けてくださったのは、記憶していたお名前からChief Conciergeの女性であることが伺い知れるのであった。
また、私達に用意いただいた席が “The Main Dining”と呼ばれるところであった。

さて、食事の中味は予約していなかったのでどうしようかと一瞬思ったが、相方Yさんも脂っこいものが苦手だということで、10,000円のコース料理にしてコースメニューの中味に脂っこいものが入らないようにお願いした。
それ以外もYさんの要望として貝類が混ざらないようにも付け加えさせていただいた。

コース料理にしたのは、単品の中から選ぶのが邪魔くさいからであって、大した意味はなかったのだが、注文後にコース料理の記載内容を見てみたところ、

  • オーシャントラウトと帆立貝のタルタル
  • フォアグラのキャラメルソテー

の2品が私達の要望に引っかかっていたにもかかわらず、ほかにもダメなものがないか十分に確認を求められつつ快く引き受けてくださった。

料理のコースは決して超高級といえるほど高いものではなく、単品で注文するとさらに安くすることも可能。

ちなみにではあるが、この日のコースメニューをご紹介すると、

8,400yen A-muse:渡り蟹のビスクスープ、Cold Appetizer:旬の鮮魚のカルパッチョ、Hot Appetizer:Casita風 鴨南蛮、Fish:スコットランド産サーモンマリネのカツレツ 自家製トマトチャツネ添え、Meat:岩手県産若鶏のグリル、本日のデザート、コーヒーor紅茶

10,500yen A-muse:スプーン一杯の幸福、Cold Appetizer:オーシャントラウトと帆立貝のタルタル、Hot Appetizer:フォアグラのキャラメルソテー、Fish:旬の白身魚 お魚に合った調理法で、Meat:熊本県産黒毛和牛フィレ肉のグリエ 筍の田楽添え、本日のデザート、コーヒーor紅茶

12,600yen A-muse:スプーン一杯の幸福&“Chef”の花嫁、Cold Appetizer:鮮魚のカルパッチョ 春菊の中華風サラダと共に、Hot Appetizer:フォアグラのキャラメルソテー 生ハムメロン添え、Fish:オマール海老のシンプルグリエ、Meat:熊本県産黒毛和牛フィレ肉 美味しい所だけ、本日のデザート、コーヒーor紅茶

これに職人伊藤による“和”のコースというものが加わる。(10,500yen)
寿司 八寸:寿司三貫と、春の和前菜三種 盛り合わせ
刺身:平目の巾着、三色包み アボカドと長芋添え
煮物:金目鯛と野菜の焚合せ
油物:あいなめの骨切り 唐揚げ 枝豆あん掛け
御飯物:ひつまぶし風 うなぎの石焼ビビンバ
甘味:あずき白玉 練乳掛け

ナプキンを広げてみてビックリがひとつ。

これには名前のイニシャル2文字の刺繍が入っているのだ。

私は予約の際に、オプションサービスとして入れるかどうかの質問があったから、注文通りと思っただけだったが、相方はかなり驚いていた模様。(続く)

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愛と感動のレストラン「カシータ」のホスピタリティ(1/4)

Filed under: マーケティング — 咲本 @ 16:35:11

小雨のパラつく午後10時の表参道。
私は青山学院大学前にあるレストラン「カシータ」はどこかと探していた。

「確かこのあたりのビルであるはずだが。。。」

ふと近くにいたスーツ姿の男性が「どちらかお探しでしょうか?」と声をかけてくれたので、「カシータというお店を探しているのですが」とこたえたところ、「カシータはこちらでございます。ご案内いたします。」と、その男性がエレベータのほうに私を誘導し始めた。

実はこの男性はカシータの誘導担当スタッフだったのであった。

インカムを装着した彼はさりげなくお店のほうにも連絡したようで、3階でエレベータの扉が開くと、スタッフ数名が「咲本さま、いらっしゃいませ!カシータへようこそ!」と笑顔でお出迎えいただいた。

少なくともお客様に接するスタッフ全員がインカムを装着しているようだったので、おそらく手の空けられるスタッフと私の一応の接客担当者がすぐにアクションを起こせるようになっているのであった。

客席にご案内され、テーブルに着いてビックリ。

そこにはランプのところに客の名前のはいった手書きのウェルカムカード、テーブル前方のナプキン上には名前入りのメニューが置かれていた。(下の写真2枚)
カシータ1

カシータ3

「予約席」「Reserved」なる表示がなされているのをよく見かけるが、考えてみればこのような表示は「ここは予約が入っている席なのだから、あたたたち予約の入れていない客が勝手に座ったりしないでね」くらいの意味合いしかない。

予約した客をねぎらう気持ちを表現したいのなら、お客様に対してウェルカムの気持ちを表現したものでテーブルまわりを演出したほうがいいに決まっている。

また、大きな立て看板みたいなものに名前を書かれたもので表示されたとすると、これもほかの客の手前恥ずかしく、メニューへの名前表示やランプのところにある小さなウェルカムカードくらいが、その表現としてはちょうどいい按配なのではなかろうか。

相方がまだ到着していなかったこともあって、スタッフの一人が話しかけてきた。

「国立劇場の公演はいかがでしたか?」

私が電話で予約を入れた際、「19:00から始まる国立劇場での舞踊団の公演を観たあとでお店に向かうので、はっきりわからないけれど22:00頃かなあ」と言っていたことがスタッフ全員に伝わっているのであった。

「私も楽器をやっていたので、クラシック音楽なんかにも興味がありましてねえ。ストラヴィンスキーをされているのでしたら、面白そうですから仕事を休んで観にいこうかな。」

そんな会話をスタッフさんと交わすことができた。

ちなみにこのお店は約130坪の広さがあり、ほぼ全ての客が予約だけで埋まるわけなので、私だけを特別扱いにして名前で呼んだり演出したりしているわけではなく、私がこのあとにも受けるサービス水準をすべての客に施しているのである。

私のことについては、

  • 京都から来た客
  • 国立劇場の公演を観に来た
  • 同伴する客の名前が○○
  • タバコを吸う客だけど禁煙席しか空きがなかったので渋々了承している

ここまでの情報が予約した時の会話内容から得られるものであるのだが、 それらのことを全スタッフが完全に理解していた模様。
いったい毎日何十組もの予約客を把握していけるものだなあと感心する。

これだけでも他店にはないサービスとなるのであろうが、ここまではほんの序章に過ぎなかった。(続く)

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2005/6/1 水曜日

オーケストラのサウンドを変えてしまうということは?(戦略と戦術の違い)

Filed under: 経営戦略 — 咲本 @ 9:40:47

今、ズービン・メータ指揮、ロサンゼルス・フィルハーモニック管弦楽団のサン・サーンス交響曲第3番「オルガン付」を聴きながらコラムを書いている。
サン=サーンス:交響曲第3番ハ短調「オルガン付き」
指揮: メータ(ズービン)、演奏: ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団

米国には、世界的に超一流といえる素晴らしいオーケストラがいくつも存在する。
しかし、ロサンゼルス・フィルと他のオーケストラの違いを言うと、シカゴ交響楽団のような通常の楽団の数倍もの音量でまとめ上げてしまえるようなパワフルさは全く存在しないし、ニューヨーク・フィルのようにパワフルさは全然ないけれど、渋いサウンドということもなく、フィラデルフィア管弦楽団のような華やかさもないし、ボストン交響楽団のように個々のスキルが高い上に、ポップス演奏までを一流のサウンドで聴かせるような器用さもない。
一言で言うと、悪い意味での米国的脳天気さ(下品といってよいかもしれない)を強く感じさせるサウンドである。
音色が明るめで、「音の芯」が希薄な音色であるから、このような印象を抱いてしまうのであろう。

これは、企業に当てはめると、社長を変えることで「企業風土」や「企業文化」が急に変わるのかという議論と関係するかもしれない。
(この議論については、そんな簡単には変わらないと考えるが、今回のコラムでは結論は述べない。)

指揮者がレコーディングを馴染みのないオーケストラで行い、曲の解釈については指揮者の意向が色濃く反映されていても、オーケストラのサウンドが根本的に変わってしまうようなことは、まずありえない。
というか、オーケストラの団員が頑固であるためなのか、事例として皆無である。

でも、実はオーケストラのサウンドを指揮者は変えることができるのである!!

では、世界初かもしれない発言を以下に書いてしまおう。

なぜ、個々に特徴を持つオーケストラのサウンドそのものを変えることができるというのか?
それは、ロサンゼルス・フィルの場合には、現状のサウンドで演奏することは、大きなマイナスなのであり、サウンドを変更するような指導を専任音楽監督たる指揮者が、意識して具体的に指示していくことが必要となる。

国内オーケストラの中で、超一流と思われていないオーケストラ全般について、なぜ超一流と思われるサウンドに変更できないかについての明確な理由がある。

それは、音楽監督に就任してそのオーケストラを育てていかないといけない指揮者達が、「戦略」と「戦術」の意味における違いを全く理解してこなかったことが、最大の理由である。

個人的に定義付けさせていただければ、「戦術」とは日常における行動方針のようなもので、オーケストラにおいては、個々の旋律の演奏についての解釈を伝えていくような作業を指す。
実は、コンサートに至る準備は、ほぼこの作業だけで終わっているのが現状なのである。

何を言いたいか?
上述の状況では、戦略がゼロなのである。
戦略とは、3年後にはこれだけの利益を出したいなどの目標(ビジョン)と、戦術や日常業務との間を橋渡しするものであり、どのように目標を実現するのかについて、ミッション、事業コンセプト、事業ドメイン、ターゲット顧客、マーケティングミックスなどの点から明確にしていくべく考えた結果を指す。

これは日産がカルロス・ゴーンを社長として招いても、小さなデザイン変更だけで新機種だと誤魔化すような戦術を行っていれば、日産の復活は絶対になかったわけであり、繰り返すと「組織におけるビジョン、ミッション、事業コンセプト、事業ドメイン、ターゲット顧客、マーケティングミックス」という点に具体的に行動ができるようなメスを入れていったことが、企業変革に繋がったわけなのであろう。

これを、まるで一時的にレコーディングするための指揮者のような指示をゴーンがやっていたなら、今日の日産の姿はあり得なかった。
すなわち、戦術に走るのではなく、戦略を深く理解してもらうところに主な力を入れつつ、それを各現場担当者に落とし込んだ場合、どのような実践となるのかまでを明示していったところが画期的であったのだろう。

何度も繰り返すが、「戦術」とは日常的行動規範のようなものである。

サウンドを変えるのは、演奏方法の指示よりも、一階層高い「層」についての指示となる。
指揮者が「戦略」と「戦術」の違い、様々な「層」が上下に拡がっており、それを認識した上で、目的の層について的確に語り続けること。
これができれば、既存の指揮者が演奏における解釈の指示だけでなく、サウンド自体の指示による変更が可能となる。
「演奏の解釈」の上層に「サウンド構築」というものがあるのだから、「層」が違うと認識していない以上、サウンドを変えることはできない。
勿論そのためには、演奏のビジョンや基本コンセプトを語り、それに最適なサウンド像を理解してもらうように語り続けることが前提となるわけであるが。

こんな話は、ちょっとした戦略論の話となるかと思っている。
コヤマン、こんな感じで戦略にまつわる話として成り立つかなあ。
(2005/06/01)

2004/11/15 月曜日

デザインとは?

Filed under: 読書 — 咲本 @ 12:31:53

『日刊SOHOのツボ!』に掲載
http://www.soho-union.com/soho/

「続・SOHOによく効く書籍」(#010)
咲本@時計台ネット

【○】本日のお題「デザインとは?」━━━

こんにちは!咲本です。

私の「続・SOHOによく効く書籍」というコラムも今回で10回目。
このコラムが最終回となりました。

といっても「SOHOのツボ!」が終わるということでは決してありません!
その後も「続・続SOHOによく効く書籍」として書かせてもらうかもしれませんし他のお題で書かせてもらうかもしれません。

引き続きのご愛読をお願いいたします!

さて、SOHO事業者の方の中には、何らかの形で「デザイン」ということに関わっておられる方が多いのではないかと思います。
グラフィックデザイン、ウェブデザイン、空間デザイン、‥‥。

更には、「コミュニケーション・デザイン」と位置付ければ、全ての事業者に関
係するテーマとなるのではないでしょうか?

では、早速おすすめ書籍のご紹介に移ります。

デザインのデザイン原 研哉『デザインのデザイン』


著者は長野オリンピックの開閉会式プログラムや2005年愛知万博プロモーションニッカウヰスキーやAGFの商品デザインなど、幅広く活躍されていて、数々のデザイン賞を受賞されているデザイン界の重鎮です。

書名の説明をしますと、デザインとは何かわからない人に、デザインとはこういうものである!と、デザインということについてデザインした書という意味だと思われます。

「ではデザインとはどういうことなのか」という説明をするのにあたって、実際のプロダクトデザインの写真を掲載しながら説明していく展開となっていますので、たいへん説得力を持って主張が伝わってきます。

例えば、トイレットペーパーの芯を四角くして紙を巻いたトイレットペーパーが写真とともに事例として説明されます。

私のような素人は、「またまた、奇をてらっただけと違うの?」と思いがちになるわけなのですが、説明を読んで「なるほど!」と納得しました。

それは、

器具に装填してこれを用いると引き出すときに必ずカタカタカタという抵抗が発生する。通常の丸いタイプだと軽く引っ張っただけでスルスルスルーッと滑らかに紙を供給してしまう。必要以上に紙を供給する設計になっているのである。トイレットペーパーを四角くすることでそこに抵抗が生じる。ゆるい抵抗の発生はすなわち「省資源」の機能を生むわけであるが、資源を節約しようというメッセージも一緒にそこに発生する。さらに、丸いトイレットペーパーだと重ね合わせた際に隙間がたくさん生じるが、四角いとそれが軽減され、運搬やストック時の省スペースにも貢献するのである。

この事例から、

デザインは生活というポジションから見る文明批評である。これは今日にはじまったことではない。デザインという考え方・感じ方はその発生に遡って批評的なのである。

という結論に導かれます。

たった、丸いものが四角いものに変わった中に、デザイナーはこれだけのメッセージを発生させることができるわけです。

そういえば、私自身は80年代に当時流行した「ポスト・モダン」ブームに踊らされた経験を持っています。

思想界では浅田彰が火付け役となり、建築界では磯崎新の発言を数多く耳にし、流通業界では西武セゾングループの「おいしい生活」キャンペーンが派手になされていました。

ポスト・モダンは名前のとおり、モダンを乗り越えるムーヴメントとして世界的にも大きなうねりとなったわけなのですが、湾岸戦争以降すっかりとなりを潜めました。

著者は、遊びのデザインに走った一時的迷走がポスト・モダンであって、まだモダンは続いていると言われてます。

本書を読み進むうちに、いわゆる一般的なデザイナーから抱くイメージとは必ずしも合致しないデザイナー像が浮かび上がってきます。

それは、下記のような発言からも伺えます。

デザインは技能ではなく物事の本質をつかむ感性と洞察力である。だからデザイナーの意識は社会に対していつも敏感に覚醒している必要がある。そういう意味でも、時代の変化に応じてデザインのフィールドを揺さぶって、それを世の中の適正な場所に再配置していくことが大事なのだ。

デザイナーは本来、コミュニケーションの問題を様々なメディアを通したデザインで治療する医師のようなものである。だから頭が痛いからといって「頭痛薬」を求めてくる患者に簡単にそれを手渡してはいけない。診療をするとそこには重大な病気が隠れているかもしれない。時には手術も必要になろう。それを発見し最良の解決策を示すのがデザイナーの役割である。「頭痛薬」を売ることに専念しているデザイナーは安価な頭痛薬が世間に流通すると慌てることになる。

これを私流に言い換えますと、医師のようなものとはコンサルティングができるということでもあり、デザイナーは一流のコンサルタントでもあるべきであると言われているのも同様なのではないでしょうか?

逆に、私のようなコンサルタントとしては、著者のいう「デザイン」への眼差しを持っていなければ、一流のコンサルタントとは言えないということになってきます。

ということは、読者ターゲットとしてコンサルタントの人達も入ってくるわけです。

道理で2003年10月第1刷の本書が、2004年9月に第12刷にまでなるという、この手の単行本としては異例の売れ方をしている理由がわかったような気がしました。

【プロフィール】
咲本 勝巳(さきもと かつみ)
1965年京都生まれ。京都在住。eビジネス、組織論、創業、ベンチャー、経営戦略、現代思想にとても高い関心を持つマーケティングのコンサル屋。

関西ベンチャー学会 理事 http://www.kansai-venture.org/

大阪市立大学・大学院創造都市研究科アントレプレナーシップ研究分野
「創業アドバイザー」 http://www.gscc.osaka-cu.ac.jp/

起業・マーケティング・eビジネスによく効くメルマガ「週刊☆ビジマ」発行人
http://www.mankai.biz/

【あとがき】

10月13日は某方と打合せの予定でお会いしたのですが、打合せはごく短時間で終わってしまい、京都北白川の高級店で絶品のフグとカニをたらふくご馳走になってしまいました。
その後、「祇園に行きましょう」ということになり、路地を入ったクラブで呑み始めたところ、舞妓さんと芸妓さんを手配されていたようで、その方々を交えて祇園をハシゴしました。
祇園で遊ばせてもらうのは昨年の某方に連れて行ってもらって以来、今回が二度目です。
まだまだ舞妓さんと呑むことは経験が少なすぎるので、どう対応したらいいのか全くわかりません。
この方いわく、「やっぱり京都文化を知るには、舞妓・芸妓遊びくらいは知っておかないとわからないのと違いますか。私のように遊ぼうと思ったら、少なくとも年間500~600万くらいはかかってしまうけど。でも京都外から来られた方が皆舞妓さんとの席を希望されるので、サブとして宮川町も行ってるねん。」と言われてました。
この方は、私の年齢よりはるかに若い時期から祇園に入り浸っておられたようでそろそろ私も、ちょっとずつでも祇園文化を体験していこうかなあと思いました。
そういえば、私と同世代のまわりの人間が祇園で遊んでいるということを、聞いたことがありません。
そのあたりの動向が、花街の売上低下原因のひとつになっているのでしょう。
でも、仕事をいただく立場の私が、こんなに接待を受けていいものなのかなあとちょっと考えてしまいました。

ご意見・ご感想は→ mailto:sakimoto@tokeidai.net
私についてご興味のある方は硝子張り公開→ http://www.sakimoto.biz/
(2004/11/15)

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